第27話 探し人

思い浮かぶのは倒れた青年の寝顔。

思わず撫でてしまったのは失態だったけど。

瞳は目の覚めるコバルトブルーで、一瞬で心臓を鷲掴みにされてしまった。


「フェミニア、適当にご飯買ってくるよ」


ドアの向こうでソウタが声を掛けてきた。

もうそんな時間なのね。


「相手は他国の王様なのよね…」


まだ王子なら希望が持てたのだけど。

流石に王様だと絶望的に思えた。

友達になってと言われたけど。

また会えるのだろうか?


「おそらく…結婚はされているわよね?」


あれだけの容姿だ。

女性が放っておくはずがない。


「はぁ」


私は一つため息をついた。




   *




ざわざわ…。

町中が騒がしいな。

家へ帰る途中、何事かと思って騒ぎの方へと行ってみた。


「黒い髪の女性?」


目鼻立ちが整った長い黒髪の女性。

背中には漆黒の翼が付いている。

隣にはフードを深くかぶった背の高い男。

何やら二人で話をしている様子だ。


「白い翼もキレイだったけど、黒い翼もキレイだな」

『あ、あの人は…』


「あれ?コルネット知ってるの?」

『ソウタ、あの人はゼノベア王の母親で魔王よ』


「「ま、魔王?」」


思わず叫んでしまった。

僕はコルネットに手で口を塞がれた。


『しっ、ソウタ…声が大きい!』


「あ、あそこに居た!」


注目の人達が、僕たちを指さしてこちらに向かってきていた。




   *




少し前―——。

ぼくは城を抜け出していた。

王様が城を抜け出すなんて大騒ぎになるが、らちが明かないと思った母がぼくを連れ出したのだ。


「少しの間とは言え…抜け出すのは不味いって」

「なあに、バレなければよいのじゃ。アルトは相変わらず臆病だのう」


小さい町に来てぼくたちが珍しいのか人が集まって来ていた。


「何だか目立ってない?」

「わらわがちと目立ちすぎたのう。天使族は珍しいからの」



最初はトステア城に赴いたのだが、彼女は城には住んで居ないという。

どうやら彼女は冒険者をしているらしい。

想像していたより自由な性格のようだ。

突然姿を現したぼくたちにトステア王が腰を抜かしていた。

ぼくの姿を見てようやく信じてもらえたけど…。

(後でお詫びの手紙を書いておこう)


彼女はスミットという小さな町に住んでいるらしい。

母の移動魔法(転移魔法かな?)を使って移動する。

風魔法で移動する手段もあるけど、時間がかかり過ぎるので今回は使えない。


「「ま、魔王?」」


少年の叫び声を聞いて、城であった少年を見つけた。

何で母の事を知っているのかと一瞬思ったが、隣の女神に教えてもらったのだろう。

女神は羽を隠しているようだった。


町で探す手間が省けて助かった。

幸い少年の言った言葉は、町民は無関心のようだ。

母が魔王だという事は、前王様には内緒だったからね。

今現在、家族以外誰一人として知る人はいないのだ。

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