第26話 隠し事
「お腹空いた…あれ?フェミニアは?」
僕はリビングに顔を覗かせた。
ご飯時になると真っ先に「お腹空いた~」って連呼する彼女が、リビングに見当たらない。
『一人になりたいって部屋に
「そっか。じゃあ、ご飯を適当に買ってくるとするか」
外に食べに行く気分では無いのだろう。
僕はご飯を外で買ってくることに決めた。
コンコンコン。
「フェミニア、適当にご飯買ってくるよ」
僕はドアの前で一声かけて、コルネットと出かけた。
ゼノベア城に行ってから数日が経っていた。
ゼノベアの王様が「友達になりたい」って言っていたけど本気だろうか?
あれからフェミニアの様子が少しおかしい。
話しかけても上の空なのだ。
「コルネット、フェミニアどうしたんだろう。病気か何か?」
『さあ?』
お店でパンにお惣菜が挟まった物を幾つか買った。
何かの肉の揚げ物が挟まっている。
いつもパンばかりで、お米が無いのが唯一の不満だ。
「お米食べたいな…」
『お米ってなあに?』
「お米って言うのは、白いつぶつぶの…穀物?説明すると難しいな。食べ物だよ。稲だっけ?こっちにも似た植物無いのかな…」
『へえ~。そうなんだ。探してみれば野生の草が生えているかもしれないわね』
*
「はぁ…」
「なんじゃ、久しぶりに顔を見に来たらため息ばかり付きおって」
ぼくはアルト、今日は自室でソファに座りぼんやりしていた。
この前の一件があり、仕事をセーブしているのだ。
王様の仕事も大変だ。
昔、前任の王様に凄く気に入られて次の王様へと推薦をされたのだけど…。
あれから300年経っていた。
それからずっと一人である。
久しぶりに母さんがゼノベア城へ訪ねてきた。
母さんは妙齢の美女で長い黒髪、黒い翼が神秘的な女性だ。
天使族という種族らしく父さんは人間だった。
父さんは寿命でとっくに亡くなってしまっている。
ぼくは人間と天使族のハーフなのだ。
「はぁ…」
「やけにため息が多いのう」
「会いたい…」
「ん?」
「「い、いや何でもないよ?」」
つい口に出て焦った。
言えない…まさかこの前出会った少女と、また会いたいだなんて。
歳幾つ離れていると思っているんだよ…。
ぼくは頭を抱えた。
「何か隠しておるのう…アルト?」
母さんがぼくをじっと睨んでいる。
「「アルトよ!母さんに包み隠さず正直に言うが良い!!」」
大人になっても母さんは母さんだな…。
ぼくは母の気迫に圧倒されていた。
「もう、参ったな…分かったよ。観念するよ」
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