第15話 冒険者ギルドで絡まれた1

僕は本屋から城に戻って王様に頭を下げていた。

王様は玉座の間に居た。

後ろにはコルネットが待っている。


「すみません!僕はどうしてもフェミニア王女と婚約は無理みたいです」


「そうか…。上手くいくと思ったのだがな。致し方あるまい。なに気に病むことは無い。この事は忘れてくれていい」


意外とあっさり認められた。

もっとゴリ押ししてくるかと思ったけど。

しかしフェミニアは一体、城で何をしたのだろう?



玉座の間を退出した後、歩きながらコルネットと話す。


『婚約断ったの?』

「うん。僕にはコルネットが居るからね」

『そっか。良かった…』


コルネットはホッとした表情をしていた。

そういえば婚約の事コルネットは反対しなかったな。

我慢していたのかもしれない。


「コルネット、ごめんね。君の気持ち考えてあげてなかったよ」

『うん。大丈夫』




   *




「最後に王都の冒険者ギルド行ってみようかな…」


城を出てから思った。

折角遠くまで来たし、王都まで来る機会なんて中々無い。


冒険者ギルドは表通りの目立つところにあった。

本屋からそう遠く離れていなかったのだ。


『わあ~。大きいわね~』

「王都だからかな?ひょっとして本部かもしれないね」


頑丈なレンガ造りで、中は広く二階にも何か施設があるみたいだ。


「はあ…はあ…ちょっと、置いて行かないでよ」


フェミニアが息を切らしていた。

あれ?付いてきたんだ。

てっきり城に居ると思ったのに。

服装もドレスから普段着のワンピースに着替えていた。


「あんな窮屈きゅうくつな所居られるものですか。今回はソウタが一緒って事で城を出る許可が取れたわ」


今回は家出ではないらしい。

婚約の話は断ったのだけど。


「また一緒に冒険者しましょ?」


フェミニアは僕に寄って腕を絡めようとしたので少し離れる。

距離が近すぎるのだ。


「一緒は良いけど、少し離れてくれる?」

「仲間なんだし良いじゃないの」



見知らぬ一人の男性がコルネットに声をかけてきた。


「素敵な彼女…オレとお茶しない?」


短髪赤髪の男、20代後半くらいだろうか。

腰に短剣を下げていて、何だかチャラそうに見える。

一応冒険者なのだろうけど。


「コルちゃん、こんな男相手することないわよ。ロクな経歴じゃないわ」


鑑定で見たのか、フェミニアがコルネットに注意する。


「何お前?邪魔」


男がコルネットの隣に居たフェミニアを突き飛ばした。


「きゃっ!何すんのよ!」


『何も、突き飛ばす事ないじゃないですか』


コルネットは男を非難する。


「怒った顔も素敵だぜ」


パシン!


男が彼女の顔を触ろうとしていたので、僕は男の手を払った。


「あ?何だ小僧…痛い目にあいたいのか?」

「…彼女に触らないでください」


僕は男を睨みつけた。

コルネットに手を出すのは許せない。

彼女は僕の袖をぎゅっと掴んでいた。


「ミヤマさん。ギルド内で喧嘩はしないで下さいね」


おっとりとした声のギルド職員に注意される。

冒険者ギルド内では喧嘩はご法度だからだ。

喧嘩をしたら処罰される。


「チッ」


男はギルド職員をチラリと見て僕に告げた。


「「おいお前!表に出ろ!」」

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