第10話 盗賊

ガタゴト…。

乗合馬車は街道の森の中を抜けて行く。

町に着くまで何もすることが無くウトウトと眠りかけていた。

最初は慣れなかったけど、何日か乗ったら馬車も快適なものだ。

爽やかな風が通り抜けていく。


ガタン!


急に馬車が停まった。

あれ?どうしたんだろ。

まだ次の町も見えていない森の中だ。


不思議に思い、外を見てみると。

馬に乗った男たちが、乗合馬車を取り囲んでいた。


「困ります…次の町まで行かないとなので…ヒイッ!」


御者の人の悲鳴が聞こえた。

武器を突きつけられたのだろうか。


「金品を差し出せば殺しはしない」

低い男の声が聞こえた。


「もしかして盗賊?」

「そのようね」

『人の物盗んで何が楽しいのかしら』


このままでは僕らにも被害が及ぶ。


「盗賊だって?」

「きゃあ」

「まだ、死にたくない…」


ザワザワ…。

居合わせた家族連れらしい乗客から悲鳴が上がる。


「コルネット、えっとね…」

『え?魔法で?うんうん。何とかなるんじゃないかしら。上手くいかなかったらわたしがフォローするわ』


僕はコルネットに魔法でやりたいことを伝えてみた。

出来そうなのでやってみることに。

いざとなったらフォローしてくれるらしい。


実はイザという時の為に魔法の練習をしておいたのだ。

御者に防御魔法をかけて、乗合馬車に幻影魔法をかける。


「『幻影魔法イリュージョン』」


馬車全体に魔法の幕をかけて、馬車の姿を一時的に見えなくした。


「あれ…馬車が消えたぞ?」

「さっきまでそこにあったのに」


盗賊たちがキョロキョロと視線を動かしていた。

御者の近くに居た男も、急に御者の姿が見えなくなったので慌てている。

剣を振り回しても御者に当たることは無い。


最初に御者に防御魔法をかけておいたのだ。

僕は御者に後ろから話しかけた。


「御者さん。移動するなら今のうちです。一時的に僕たちが見えなくなる魔法をかけましたから」

「え?そうなのか。わかった」


動くと音でバレてしまうので「防音」と武器が当たっても大丈夫なように「防御魔法」を馬車全体に張る。


馬車がゆっくりと動き出した。

どうやら馬車は見えていないようだ。

矢が飛んできたが障壁に阻まれて届かない。

念のためかけておいて良かった。


『驚きました。ソウタ、だいぶ魔法を使いこなしていますね』

「本当よね。いつの間に練習したのかしら」


深夜にコッソリ練習していたことは内緒だ。


「あはは…まあ、たまたまだよ」

僕は笑って誤魔化した。




   *




「おかしい…消えるはずは無いのだが」


ワシは盗賊の頭領だ。

乗合馬車を取り囲んだはいいが、姿が見えなくなった。

念のため矢を放ってみるが手ごたえが無い。


「魔法を使うやつがいたのか?やっかいだな…仕方ねえ。おいお前ら引き返すぞ」


「「「へい!」」」


十数人の部下が返事をした。

馬車が消えることは考えにくい。

恐らく見えなくなるように偽装したのだろう。

今回は運が悪かったようだ。

仕方ない。

次にやってくる馬車を狙うとしようか。



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