第9話 王都へ
フェミニアと一緒に住むようになって便利になった。
待ち合わせする必要が無くなったからだ。
今までは冒険者ギルドに行って待ち合わせをしていた。
フェミニアが、いつも本を読んで待っていてくれていたので、すれ違わずに済んでいたのだ。
「待ち合わせしなくて済むのは楽だわね」
「四六時中、顔を合わせるけどね」
「ソウタ、その言い方!私の顔を見るのが嫌なの?」
フェミニアが頬を膨らませる。
「そんな事無いよ」
僕は慌てて否定する。
「そういえばふと思ったのだけど、ソウタの能力なら別に冒険者じゃなくても良いんじゃないの?例えば何かのお店を始めるとか…商業ギルドに登録して、回復ポーションとかも作れそうじゃない?」
冒険者は怪我がつきものらしくて回復ポーションが必須なんだとか。
ポーションか…う~ん。
「本を読みながらのんびりしたいな~」
「あーそれ分かるかも」
「でしょ?」
「そういえば王都に大きい本屋さんがあるって聞いたわ。いっそのこと本屋さんにでもなっちゃえば?暇な時間、本読み放題よ?」
こちらの世界では、専門書が多いせいなのか値段が高い本が多い。
「それも悪く無いね。いつか王都行ってみたいな」
*
一か月後。
僕たちは「行ってみたい」と言っていた王都に行くことにした。
乗合馬車で一週間かかるらしい。
途中、宿へ泊まりながら乗り継いで行く。
徒歩だとだいぶ時間がかかるし、疲れるからね。
「何だか旅行みたいでいいよね」
『旅行ってなんです?』
「旅を楽しむ感じかな?」
「ソウタの世界って平和なのね~」
馬車はガタゴト揺れながらのんびりと進む。
平和か。
果たしてそうだったのだろうか?
今にして思えば、あまり楽しくなかったと思う。
それでも勉強は仕方が無かったのかもしれない。
良いところに就職して働かないといけなかったから。
でも、今の方が自由な気がする。
思っていた異世界とはちょっと違ったけどね。
「のどかだなあ。何事も無ければいいけど」
「次の町で停車したら、宿を探すわよ。見つからなかったら野宿ね」
フェミニアは地図を広げて見せ現在位置を確認する。
こうしてみると結構距離があるんだな。
今は森の中を通っているらしい。
「野宿?流石にそれは…」
『野宿って何をするんですか?』
コルネットは何を聞いても楽しそうにしている。
一緒に居て思うけどいつもポジティブ思考だ。
「コルネット、野宿の用意も何も無いのだから…大体モンスターとか居たらどうするの」
『わたしがサクッと倒しちゃいます!』
物騒なことをさらっと言うコルネット。
実際倒せるのだろうけども。
「宿は、町に着いてから心配すれば良いわよ。大丈夫何とかなるって!」
馬車は何事もなく森の街道を走っていた。
何も無ければ数時間で次の町へ到着するはずだ。
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