第33話 衝撃的な出会い

初めてのスキルへの期待が、俺の頭の中を支配した


思考力を貪る期待が、想像の自己増殖に加担していた。


ここまで自制が利かないのは、おじいさんの最強発言のせいだろうか……


そう思った矢先、前方100mを偵察中の粒子が、徐々に祠を視界に収め始めた。


自分が動くと、偵察粒子の映像も動くから、偵察できていると信じていたが、祠の映像で確信できた。


間違いない、昨日参拝した祠だ。


つまり、俺は、きちんと偵察粒子を使いこなせているんだ!!


ん……?


誰か居るなぁ。


ふふふ、早速偵察粒子が偵察機能を発揮してくれたわけだ……どれどれ……


送られてくる映像に意識を向けると、祠に肘をかけている人が見えた。


全身黒尽くめだ。


体のラインからして…メリハリが利いてるから…女性かな。


ハッ!


俺は息を飲んだ。


女性と目が合った……?


いや、まさか、気のせいだよな……


俺の使っている偵察粒子は極微細な肉眼で見えないほどの粒子だっておじいさんは言っていたし……


しかし、映像の中の女性は、こちらに微笑みを浮かべて、徐に左の手のひらを向けて手を出した。


そこで、粒子はあっという間に女性に近づき……


映像が途切れた。


吸い込まれた……?


飲み込まれた……?


呆気に取られている俺の目の前に、彼女が立っていた。


「え?」


俺の混乱が、小さな声となって口から洩れた。


その声で我に返れた。


落ち着け、今は目の前の事態に集中だ!


見れば、女性は、クマエに勝るとも劣らないグラマラスな体形をしていることが、体に密着するようなドレスから伺えた。


露出していなくても、セクシーだな……


じゃないッ!!


どうする……


俺は戦う術が無いぞ。


何とかやり過ごすしか……


女性は、顔から足の先までジロジロと俺を見て、開口一発。


「ジジイ、勝手なことをしやがって!」


怪しい黒尽くめの女性から出るプレッシャーに、命の危機を感じていた俺は、女性の一言を引き金に、頭の中で、走馬灯のように、転生してからの記憶が去来した。


「え?ジジイ?白いおじいさん?」


「問答無用ッ!!」


突然、俺は左手を握られた。


その直後、全身に電気が走ったように痺れて、目の前が真っ暗になった。




視界が戻った。


太陽の位置は変わっていない……すぐに意識を取り戻せたようだ。


何事も無かったかのように、俺は祠の前に立っている。


ただ、左腕の手首から肘にかけて黒い包帯が巻かれていた。



ジジイってのは、白尽くめのおじいさんのことだろうか。


こちらに転生して、思い当たる「ジジイ」は、他に居ない。



それにこの包帯、右手のと酷似している。


ということは……夢の中で会うのかな。


そう思った瞬間、体に密着して妖艶さを放つ女性の姿が脳裏に浮かんだ。


何だか楽しみだな。


ちょっと落ち着いて話がしてみたいなぁ。


いや、ちょっと待て。


言動からは、なかなか個性的で刺激的な女性っぽかったな……夢の中が騒々しくなりそうだ。



とりあえず、疲れたわ。


まだまだ体力の回復には、時間がかかりそうだな。


スキルも試せたし、お昼寝でもしますか~。

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