第31話 初めてのスキル
今の俺がお世話になっているログハウスは、領地の外れにある。
俺というか、俺の体の元の持ち主であるラゴイルは、実家であるレーゼン侯爵城から逃げて、ここにたどり着いた。
俺を追って来た実家からの一行のことを参考にすれば、買い出しに行ったクマエが戻ってくるのは数日後だろう。
しかし、あのクマエの使命感に燃えている感じと、あの白馬の駆けっぷりなら、明日のうちに帰ってくるかもしれないな……
まずは初めてのスキルの試験運転。
それ以外は決めていないけど、この自室には飽き飽きだ。
黙々と自室でリハビリってのにも限界がある。
そして、その限界を超えて、気分転換して来たからって、「この部屋、だーいすき!」とはならない。
なんなら、ここでラゴイル様は息を引き取りましたと言われた部屋を今も使っていると思うと、気分が悪くなる!
とはいうものの、実家を追われて行く宛ても無い身だし、息を引き取ったのも数時間くらいの筈だから……仕方ない。
それでも、昼間のうちは、外に出るか……
俺は、昨日と同じく散歩することにした。
ただ、いい歳こいて独りでふらふら散策してたら迷子になりましたなんて恥ずかしい。
昨日はクマエが居てくれたけど、今日の散歩は独りだ。
道中で、アクシデントが発生しても、死に損ないのこの体で出来ることには限りがある。
できるだけ、安全に…となると…
昨日行った祠にでも行ってみるか~。
その道中でスキルに挑戦だ。
現実味を帯びてきたスキルの試運転に、胸が高鳴り始めた。
待て待て、もうひと踏ん張りだ。
ご褒美のおやつを独り占めする為に、邪魔者が入らないようにせねば……
勿論、邪魔者になりそうなのは……
「ヤマモリさーん!」
「はーい!」
俺の呼びかけにキッチンからひょっこりとヤマモリさんが顔を出した。
「すんません、また散歩に出ます。」
「え……ちょっと、今手が離せなくて……」
いひひっ、ラッキ~。
落ち着け、俺。
声が上ずらないように抑えて…平静を保って……
「大丈夫ですよ。独りで行ってきます。」
「え?ラゴイル様御一人でですか?どちらへ?」
「昨日の祠までかな~。」
「あ……了解です。何も無いとは思いますが、お気をつけて。」
よーし!
「それじゃ、行ってきまーす!」
外に出て、玄関のドアを閉めた瞬間、深い緑色の木々が眼に入った。
青空とのコントラストと、日差しを浴びて時折輝く葉がアクセントとなって、一層際立てせていた。
この転生した世界を、素直に受け入れることができたような感覚……
きっと、この世界の住民たる証拠の“スキル”を手に入れたことで、胸襟が開き、自分の居場所として感受できたからだろう。
物思いにふけっていても始まらない!
早速、試すぞ!!
えーっと……
おじいさんからは念じるだけで偵察粒子を飛ばせるって言われたんだっけ。
そしたら……まずは、俺の前方100メートルに光の粒子を1つ飛ばしてみるか……
偵察粒子……発射!
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