第27話 脱空 その2

沈黙は分かっても、その訳は想像がつかないのか……


ともあれ、沈黙を了承と取られても困るから、ちゃんと主張しないとな。


マジで営業所勤務中、上司や先輩社員の理不尽な指示や要求に、唖然としていただけで、どれだけの数、勝手に了承を受け取られていたか……


思い返しただけでゾッとする……


「えーっと、その点は、私の情報不足と理解力不足につき、一旦保留と致しまして、話を戻しますね。」


「うむ……いずれ分かる事だし、今のところは仕方ないのぅ……」


「で、ですね。“空”じゃなくなったって事は、スキルか魔法か技術を得たんですよね?」


オホンッ


おじいさんが一つ咳払いをして、背筋を伸ばした。


「如何にも。」


「何ですかね?」


「お前さんが使えるようになったスキルは、【白き理】じゃ。」


【白き理】……


俺がこの世界で初めて手に入れたスキル!!


興奮が込み上がって、背筋のゾクゾクが頭にまで登って来た。


ブルッ


抑えきれず身震いをしてしまった。


落ち着け……まだだ……肝心なのはスキルの中身だ。


「それで……どんなスキルなんですか?」


「上手く説明できんが……最強じゃ!!」


おじいさんは、これでもかと言わんばかりに胸を張って、天に向かって豪語した。


俺はそんな高い所に居ませんよ、こっちこっち……


っていうか……


「最強ですか……」


それじゃわからんし……


「何がどう最強なんですか?」


「ふふふ……」


いやいや、面倒くさいなぁ。


「勿体ぶらずに教えてください!」


「聞いて驚くなよ!何をどうやっても、最強じゃ!!」


「……」


急にアホの子になったな。


ん-……


聞き方が良くなかったかも……


おじいさんの頭の中は“最強”で思考停止していて、俺にきちんと説明するために脳が働いていない……


ちょっと、別の角度から、刺激してみるか。


「そしたら、俺、もう最強なんですか?」


「そんな訳ないじゃろ!お前さんは最強じゃない!!儂が最強で、儂のスキルが最強じゃ!!!」


「ん……?どういうことですか?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る