第26話 脱空

「それじゃあ、これで……」


「ちょっと待つのじゃっ!」


おじいさんに肩を掴まれて呼び止められた。


「ん?まだ何か?」


「おまえさん、面白いのう。ツッコミどころ満載じゃ!」


「え…?そうですか?」


「自覚が無いところがまたツッコミ心をくすぐるのう。」


「で、なんです?」


「今、儂、お前さんの夢に出てるよな?」


「そうですね……」


「で、普通に御話を楽しんでいる訳だ。」


「はい。」


「それも、祠であったのを最後に、突然消えた先の話が出来ている……ということは……どういうことじゃ?」


「ん…ん…?」


「と言う事は~?」


「ちょ……ちょっと待って下さい……」


「と、言う事はー!?」


夢って何だったっけ……


過去に見聞きした情報を整理する過程の副産物……


「はっ!!」


「ったく、おまえさん、儂がお前さんの夢に出て来てるのに、ホントにガバガバじゃな。」


「あ。言われてみれば、そうですね。今日は色々あったので、疲れちゃってて、つい流してしまいました。」


「がはは、そしたら、話は1つだけにしておこう。」


「すいません。助かります。」


「おまえさん、今の状態がどんなことになっとるか、分かるか?」


「ん-……おじいさんが目の前で消えて、夢でおじいさんと会って話が出来るんだから、私の中におじいさんが入ったってことですよね?」


「まぁ、大体あってる。敢えて、イメージしやすいように言えば、お前さんの体と同じくらいの、光で出来た体が、お前さんに重なって1つになったって感じかな。」


そう言うや否や、俺の目の前におじいさんの分身が現れた。


「こいつが…こうなって…」


おじいさんの口調に合わせて、白く光る俺の体に変化した。


「で、こうじゃ」


おじいさんが光の体の背中を押すと、スーッと俺の体に迫って来てぶつかり、そのまま吸収されていった。


「おぉぉ……」


「ざっと、こんな感じじゃ。」


「なるほど。」


「結論から言えば、お前さんは空っぽじゃなくなった。」


「え……?もう空っぽじゃない?」


「儂が入ったんだから当然じゃ。」


「ん…?この世界の住人であるおじいさんが中に入ったなら、おじいさんの属性が検出される…ってことですか?」


「ん―――っ、いや……」


「私の理解間違えてます……?遠慮なさらずに行ってください。」


「そうじゃな、空っぽじゃない。しかし、空っぽと測定されるかもしれんな……」


「どういう事ですか?」


「お前に入った光の固まりを測定できなければ、検出するものが無いのだから「空っぽ」ってなるかも……」


「あぁ、そういうことか。え…?測定できないんですか?」


「測定できないかもしれんな……儂、こう見えて、規格外じゃからっ!」


「……」


「何じゃ、その沈黙は……」

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