第25話 白いお爺さん その3
「ははは、ラゴイルのスキル、魔法、技術…全部無くなっちゃったんですね…だから、謎の球で測定されたときに何の反応もしなかったのか。」
「多分、そういうことじゃな。」
「ん?ちょっと待って!ラゴイルの魂に定着していたのは知識も?」
「うーん、そうじゃろうな。お前さんは転生したときにラゴイルの記憶や知識なかったじゃろ?」
「はい。そうなると…私の魂にも知識が定着して体に入ったって事ですよね…」
「そうじゃな。現に、お前さんは、死ぬ前のことを覚えているんじゃろ?知識が魂に定着している証拠じゃな。」
「かーっ、もっと勉強して知識を蓄えておけば良かったーっ。」
「がははっ。」
「で、挙句の果てに、寝たきりで筋力が落ちたラゴイルの体に魂が入ったもんだから、基礎能力も低いってわけだ」
「こりゃあ…、生き返ったってのに、大変な事になっちゃってんな…」
ミシミシと亀裂が入り、ベキッっと心が折れる音が聞こえた。
それと同時に、首の力が抜けて、ガクッと頭が落ちた。
「あれ?なんじゃ、思いの外、堪えたか?」
「えぇ、まぁ。」
「そうか……でも、お前さんが知るか知らないかで、この状況は変わらんぞ。」
「知ったところで、状況が改善すると思っておったか?あるいは、知ったことで状況が悪くなったか?」
「……」
「で、こうしている間にも、お前さんを、拉致監禁してあんなことやこんなことを画策する怖いおじさんたちが着々と準備して、迫ってくるんじゃろ?」
「そうでした…凹んでいる場合じゃないですね…」
「まぁ……何処の世に居ても、日々の積み重ねと、毎日精一杯やるだけですよね。」
「そうじゃ!それに、おまえさんなら、なんとかなるじゃろ!」
ははは、なんとかなるかな。
おじいさんの顔を見ると、穏やかで優しい表情を浮かべていた。
俺の顔からは不安が滲み出て、頼りなさそうだったのか、おじいさんは目に力を入れた後、力強く頷いて見せた。
「頑張りますね。」
「その意気じゃ!」
「そういえば、おじいさん、お名前は?」
「儂の名か…そうじゃな~…好きなように呼んでくれ。ここには、お前さんと儂しかおらん。別に誰を気にする必要もないからのう。」
「そう言われればそうですね。でも…おじいさんは、ふっと現れましたよ。確か、気が付いた時には、私一人だったのに…」
「ん?居たぞ。お前さんが気に留めなかったからじゃないか?」
「え?そうでしたっけ……」
「そんなことより、なんて呼ぶんじゃ?」
「あ…そうでしたね。呼び方ですか…そうですね~」
見た目は…上品な白尽くめ、俺の夢に出てくるような手練れ…
うーん……何にしよう……
「“おじいさん”で…いいですか?…」
「がははははーっ。良いぞ、良いぞ。お前さん、サイコーじゃ。」
「ははは、よろしくお願いします。」
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