第23話 白いお爺さん
気が付くと俺は真っ白な空間に立っていた。
真っ白な大地に…真っ白な空…
辺りを見渡しても、誰も居ない…何の建造物も無い…
地平さんの彼方まで見通せる、とにかく開けた空間に、俺独り……
「もう良いって、こういうの!今度は何なん!」
「ベッドの上で目が覚めて、美人に、手を握りしめられて、飛び付かれて始まるのは、大歓迎なんだけど!」
「全く!訳の分からんことが、次から次へと……」
「それともあれか、疲れてベッドに倒れ込んだ瞬間、また死んで、知らない世界にでも転生したとでも言うのかっ?」
俺のツッコミも、途方も無く広いの白い世界に、響くことも無く吸い込まれ、空しさだけが心に残った。
ううう……
嗚咽と共に膝から崩れた。
いやいや…まさか…そんなことはないよね。
恐る恐る自分の手を見ると…目に入ってきたのは、未だ見慣れないラゴイルの手だった…
「さ…流石に、ラゴイルの体で別の世界に転生って事は無いよな…」
まぁ…百歩譲って、境遇さえ改善されていれば、ラゴイルの体でもやっていくよ…
ってか、この股間で強烈な自己主張をしているジョイスティックを持参しての転生なら、生きてやらんでもないかも……
ふと思いついたアホな想像のお陰で、少し口元が緩んだのが分かった。
「お~い!」
馬鹿な妄想に耽っていると、突然背後から声が聞こえた。
ん?誰も居なかったはずだけど……
そう思いながら、頭を上げて振り返ると、祠で会った全身白尽くめのおじいさんが立っていた。
「あれ…?何で…?」
「何でって言われても……」
そう言いながらおじいさんは頬をポリポリ掻いている。
「あ、雑な質問しちゃって、すいません。ちょっと色々と動揺してまして……そんなことは良いとして。急に居なくなったからビックリしましたよ。何処に行っちゃったんだろうって……」
「此処に来てたんじゃ。」
おじいさんは白い地面を指さしていた。
「あぁ、此処にですね~」
「そうじゃ。」
いや…つい、雰囲気に合わせてしまったが、此処が何処か知らない俺としては、おじいさんの回答は、あんまり答えになってないんですが…
「それで、此処って、何処ですか」
「夢の中か何かじゃろ。」
「え?夢の中か何か?…何ですかそれ?…ん?私の?」
「他に誰がおる?それともお前さんは、他人の夢を見れるのか?」
「それは無理ですよ。自分の夢の中なら、こんな殺風景じゃなくても良い様な……」
「ん……?お前さんの普段の夢は、もっと彩り鮮やかな快適空間なのか?」
む……そう言われると、最近は、殺伐とした夢ばかり見ていたような気がする。
うなされて深夜に起きることも多かったし……
社会人になって、特に営業所勤務になってから…ってか、自分の境遇に嫌悪感を覚え始めた頃からだろうか。
はぁ…そんなことはさておき…
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