第18話 空

「あぁ…すいません。ラゴイル様は、記憶喪失でしたね…」


「いや~、何から何まで忘れちゃってまして…面目ないです…」


「いえいえ、こちらこそすいません。何から御話したらよろしいでしょうか?」


「そうですね…先ほどの“確認作業”に絡めて、分かり易く…」


「わかりました。ですが…まさか、ラゴイル様に説明することになるとは思っても居ませんでしたので、詳細な資料などが御座いません…」


「大丈夫ですよ、出来る範囲で簡単な説明で構いませんので、お願いします。」


「了解です。」


返事と共に、出されていたお茶が下げられ、再び目の前に六つの球が並べられた。


「この球は、それぞれ火・土・風・水・光・闇の属性を持っています。そのため、かざした者が持っている属性によって反応します。」


さっきは、人にばかり意識を向けて警戒していたから気が付かなかったが、よく見ると、それぞれ仄かに色がついている。


で、俺は何も反応が無かったように見えたけど……


「例えば、どんな反応をするんですか?」


「そうですね。例えば、私は、火属性を持っていますので……」


そう言いながら、うっすらと赤い球に手をかざした。


すると、球も、かざした手も、赤く光った。


「おおお。」


「このような反応は、かざした者が火属性を持っていることを示します。何も反応が無いという事は、その属性を持っていないことを示します。」


「誤作動と言うか、誤検知みたいなことはないんですか?」


「そうですね。それも試してみましょうか。私は火属性を持っていますが水属性は持っていません。その場合、水属性の球にかざすと……」


うっすらと青い球は、先ほどと同様に光を放っている。


しかし、かざした手は、光を放つことなく、血管や筋が浮き出て震えている。


「人によって…反応は…異なりますが…このように…」


苦悶の表情を浮かべながら手をかざし続けている。


とても見るに耐えず、俺は青い球を取り上げた。


「あ…すいません…」


「いえ、そこまで気合を入れて説明して下さらなくても、多分、分かりますよ。」


「失礼しました。六つの球は六つの属性に対応していますので、六つの属性の関係と同じ性質を持ちます。」

「そのため、火属性が水属性に弱いという性質も、手をかざした時に現れます。」


「球の反応は光るか光らないかだけど、かざした側の反応もあわせて確認するから、間違いなく判定できるって事ですか?」


「はい。」


「もし仮に、火も水も持っている人が水属性の球に手をかざした場合には、どんな反応になるんですか?」


「水属性の球が光り、かざした手も光ります。かざした本人に抵抗感や嫌悪感などは生じません。」


「ということは…全ての属性を強く有している場合…手をかざした球は全て光、かざした手も同じ色に光って、何の嫌悪感も生まれないんですね。」


「ははは、確かに理論上は、そういう事になりますね。」

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