第8話 ラゴイルがここに居る訳
俺…というかラゴイルの素性が分かってきたから、次は、そのラゴイルとしてこれからどうするかを考えなきゃなぁ…
そして、そのスタート地点は、このログハウスの一室……
「そういえば、なんで、私たちは、ここに居るんですかね?」
「……」
俺の問い掛けに、女性は俯いてしまった。
しかし、なぜここに居るかが分からなければ、これからの行動を決めようがない。
食い下がってでも、何としても聞き出さねば……
とはいうものの、語気を荒らげるだけでは能が無いし……
「領主の跡取りならば…例えば、領主の城?家?の自室に居ても良い様な気もしますが…」
「……」
ダメか……
いや、まだ諦めんぞ。
もう少し巧みに……
っていうか、この女性が語る事実が、仮に衝撃的な真実だったとしても、それを知って凹むのは俺だけだし。
俺にはその覚悟があるんだから、この際、嘘も方便って事で……
「記憶を失う直前の出来事を知ることは、記憶を取り戻すのに非常に有効だという話を聞いたことがあります。(知らんけど)」
「……」
「だから、是非聞かせて下さい!自分の事なんで、聞く覚悟はできていますから!」
「分かりました……」
返ってきたのは、俯いたままの小さい返事だった。
そして、徐に顔を上げて、女性は語り出した。
「三週間ほど前の事です……」
「新たに編制した封建軍の野外訓練のため…ラゴイル様は二個大隊を率いて、領内の演習場へ行軍していました…」
「そこを、賊に奇襲されました。」
「ちょっとごめん、二個大隊ってどのくらいの人数?」
「合せて500人位だったと思います。私も詳しい数までは分かりません。」
「それを襲うって、賊も同じくらいの数だったの?」
「いえ、詳しい人数までは分かりませんが、少人数です。」
「それは、かなり気合の入った賊だね。」
「そうですね…賊の目的は、始めからラゴイル様、ただ一人を狙っていたようでしたので、こちらの人数に怯んではいなかったのだと…」
「そっか…ごめん…続けて。」
「突然の事に驚いたラゴイル様の馬が竿立ちし、ラゴイル様は落馬しました。」
なんか、ラゴイルには悪いけど、ここまでの話から、ラゴイルは訓練された抑えの良くきいた軍馬に乗ってなかったことが容易に想像できるな。
どうせ、見た目の良い若い馬に、戦場に無用な装飾が施された馬具でも付けて、肝心な時に、使い物にならなかったんだろうなぁ。
「その落馬の際に、後頭部と背中を激しく打ち付けてしまい、気絶してしまったようで、ピクリとも動きませんでした。」
「間髪入れずに、興奮して暴れる自分の馬に、甲冑の上から胸や腹を踏まれてしまって……」
「すぐに、ラゴイル様を保護しましたが、意識を失ったままでした。」
聞いているだけで痛みが走ったような気がして、つい後頭部や腹部を触ってみた。
しかし、外傷という外傷は見当たらない…幻痛か…
絢爛豪華な重装備にでも守られいて、外傷は免れたとか…ただ、衝撃の強さと不意の事で、ラゴイルはショック状態に陥ったんだろうな…
「副将が軍を立て直して、賊を返り討ちにしましたが…ラゴイル様の容体が深刻だったため、野外訓練は中止とし、速やかに全軍帰城となりました。」
「そんなことがあったんですか……」
しかし、まるで、見ていたような説明だな…この女性も行軍していたのか…
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