第7話 ラゴイルの正体
「何?…言い難い事とか気にしなくても大丈夫すよ。むしろ率直に聞かせて下さい。私が本人で、当事者なので…気にしないで。」
「分かりました……ラゴイル様は、幼い時から、かなり自己中心的な性格だったようです。」
「責任感の強いレーゼン侯爵は、領主としてどうあるべきかを厳しく教えられたと聞いています。」
「しかし、幼少のラゴイル様は、領主には絶対的な権限がある事だけが理解できたようで……」
「初めは、童心の無邪気な好奇心から、その権限の強さを確かめるように、小さな悪戯をしていただけだったみたいですが……」
「歳を重ねるごとにエスカレートし、最近では領民に対してかなり横暴な態度で接していたみたいです。」
「領民に…横暴…」
「はい。近衛兵を連れては領民の生活を視察に行き、ペットにしたいと家畜の取り上げる、収穫前の農地でもお構いなしに乗馬訓練、特別徴税と言って取り立てる、気に入れば人妻、生娘、お構いなしにを連行する……」
「街に出ては、立ち寄ったギルドで遊ぶ金を無心する、報酬の大きい案件は先約を無視して部下にやらせて報酬を得るなど……思いつく限りの悪戯をやりたい放題していたと聞いています。」
おい…それは、横暴の一言では済まされないぞ…
ラゴイル…まじでサイテーだな…
え?これから俺、そのラゴイルやるの?
若返ったアドバンテージよりも、ペナルティの方が遥かに大きいじゃん!!
「でも、やりたい放題がし続けられることも凄いな。」
「次期領主様ですからね。特に力の無い者たちには、抵抗も対抗もできません。」
「力の無い者たちには…って事は…」
「はい。主要ギルドのトップ達や、城内においては、ラゴイル様の自己中心的な態度が嫌だからと敵対したり距離を置いている『反ラゴイル派』が過半数に及んでいました。」
「ちょ…それ…」
動揺する俺を気にせず、女性の話は続いた。
「敵ばかりではありません。ラゴイル様を慕う『ラゴイル親派』も居ました。」
「次期領主であることは変わりませんし、現領主様は心優しい人格者です。」
「ラゴイル様も色々な経験を経て…いずれは現領主様に勝るとも劣らない為政者になるだろうと…」
「そう信じてラゴイル様を慕い…傍に居て助言する者も…」
何処の世にも、器の大きい善良な方はいるんだな~。
「それと同時に、ラゴイル様は自己中心的でやりたい放題するから行動が分かり易く利用しやすいと考えて集まる『偽ラゴイル親派』も周りにいたとも聞いています。」
「街に出て悪さするときには、その『偽ラゴイル親派』と一緒なことが多かったんだろうね。」
「そうかもしれませんね…ただ、私にはどの方が『偽ラゴイル親派』なのかは分かりませんでしたけど…」
なるほどね~。
総じて言えば、ラゴイルの人間関係を辿って、協力を得ながら生活することは、絶望的だってことだ…トホホ…
理解と覚悟と同時に、疑問符が浮かんだ。
女性の声は話が進むごとに、力強くなり、俺…というか、ラゴイル様に記憶を取り戻して欲しいという願いが彼女を突き動かしているようにも見える…ということは…
「あなたは…ラゴイル親派…?」
「違います!」
間髪入れずに、力強い返答が飛んできた。
「そうなんですか?でも、こうして面倒を看てくれるし…」
答えて欲しくて、彼女の顔を覗き込んでみたが、口を真一文字に結んだままだ。
まぁ、答えたくなければ別にいっか。強要するのは、好きじゃないから。
「答えたくなったら教えて下さい。」
そう伝えて、質問を変えることにした。
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