第3話 転生直前 その3

 「―――!」



「うぅぅぅぅぅーーーっ!」


深夜に激しい腹痛で目が覚めた。



痛みはますます強くなり、苦痛で身体が引きつってきた。


痛みと恐怖で頭は真っ白になっていく。


吐きそうなのか…それとも下しそうなのか…それさえも全くわからない。



「なんで…こんな事になってるんだ…」


絶望的な気持ちに襲われながらも、痛みと恐怖を必死で耐えようとした。


しかし、痛みは増すばかりで、膨らむ恐怖に呑まれ、悲鳴が彼の喉から漏れ出てしまった。


「もう……もう限界だ!」



トイレに駆け込み、便器に座った。


しかし、痛みは増すばかり、俺は便座から崩れ落ちて、床に倒れこんでしまった。


そして、意識をつんざく痛みの奥から込み上げてくる便意。


痛みも便意もますます強くなり、全身を震わせながら悶え続けた。


必死の思いで再び便座に座ると、肛門が破裂するような音と共に、下痢が始まった。


そして、今までに体験した事の無いヌルっとした感覚……


ゆっくり見ると、便は鮮血に染まっていた。


間髪入れずに、再び襲ってくる便意……


苦痛で我を失い、便座から崩れ落ちないように、必死で耐えながら、止めることのできない下痢を出し続けた。



心が折れかけた頃、断続的に襲い来る下痢が終わりを告げた。


だが、痛みはまだ収まらず、ただただ身体を縮め、嗚咽した。


「なぜ…俺がこんな思いをしなければならないんだ…」


口を突いて出た言葉が空しく響いた。


ふと帰り際に向けられた下部の突き刺すような視線と、嵩華の朝笑う顔が脳裏をよぎった。


「どうせ、嵩華が行っても、下部が行っても、相手にされない…自分たちが行きにくい客を俺に押し付けてるだけじゃないか…」


「自分達じゃどうにもならない客なのに…受注にならなきゃ、全部俺のせいにして…」


「あいつ等…受注しやすい所ばかりを自分たちで囲って、ノルマを達成して…現場を知らない役員たちは、あいつらを評価して、たんまりボーナス出す訳だ…どうせ、昇進も昇給もさせるんだろ?」


「それでも俺は、毎日、毎日、反抗もせず、与えられた仕事をこなしているじゃないか!」


空しさに刺激されて、再び込み上げてくる怒りは、日ごろのストレスに矛先が向き、働く意義を見失いかけていた。


「神様は…居ないのか…」


しかし、俺の思いを冷笑した神に仕向けられた激痛が俺を襲ってくる。


「――――――!」


余りの痛みに、声にならない声を上げた。


次の瞬間、全身から血の気が引いていくのが分かった。


俺は、意識を失った。




「―――――!」


またも激しい腹痛で、目を覚ました。


必死の思いで、便座に座り直した。


俺の肛門は、聞き慣れない放水音を立てた。


我が耳を疑いながら、便器を恐る恐る見ると、出ていたのは、大量の血液だった。


大腸か…小腸で…大量出血してるのか。


思考が混乱する中、激しい腹痛の波が、またも押し寄せる。


もう…姿勢を保っていられない…


俺は再びトイレの前で倒れ込んでしまった。



もうだめだ…救急車を呼ばないと…


スマホは…


ベッドの枕元だ…


今の俺には尻を拭き上げる気力も体力も無い!


この状況に恥も外聞もあるか!!


力を振り絞って、痛みを堪えながら、這って寝室へ向かった。



何とか枕元のスマホに手が届いた……







目が覚めると、知らない天井が広がっていた。

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