第39社 使えるものはマスコットでも神でも何でも使うべし

 

 あいつが今回の目標の烈級祟魔か。思ったよりも禍々しいな。さて、どこから来るか。

 

 抜刀すると、いつでも動けるように正眼の構えの姿勢を取りつつ、祈李に念話を送る。

 

『今のうちに結界貼っておいてくれねぇか?』

『了解です』


 念話を切ると、髪束がこちら目掛けて飛んできた。咄嗟に回避するが、すぐさま第2射がやってくる。刀で斬って何とかしようとするが、髪束が硬すぎて最後まで斬れない。私は、髪束がぶつかる寸前で、自分の正面に簡易結界を貼ってその場から逃げる。

 

「何だよこれ……本当に烈級か?」

「テストのときに烈級とやりあったけど、ここまでの強さとちゃうかったで」


 私の声を拾ったのか、近くで応戦していた熾蓮からそう言われる。

 

 自分はあのとき、烈級祟魔と応戦する前にテストが終了したから、烈級がどのぐらいの強さかよく分かんなかったんだけど……。


「え、マジかよ……」

「ホンマやって」


 熾蓮の話を聞いて驚いていると、こちらに向かってとんでもない質量の髪束が飛んできた。私と熾蓮は飛んで、その場から退く。さっきまでいた場所を見てみたら、髪束が岩肌に突き刺さっていた。髪束が意志を持っているかのようにぐりぐりと岩肌から抜け出すと、またしてもこちら目掛けてやってきた。


 これ、祓力がなかったら今頃死んでるな。


 その後も攻撃を交わしつつ、烈級祟魔に近づこうと試みるが、なかなか上手くいかない。


 んー、これは1回仕切り直した方がよさそうだな……。でも、あんまり近いと殺されかねないし。あ、そうだ。


 私は一旦、刀を仕舞うと、自分を守るように紅葉を展開させつつ、印を組む。


 簡易的だけど、話してる最中に阻害されるよりかはマシでしょ。


 すると、川沿いの道の近くに小さな結界が現れる。それを確認すると、近くにいた熾蓮と祈李に声をかけた。


「一旦、結界の中に集合してくれ」

「了解です」

「分かったわ」

 

 熾蓮は炎で、祈李は鉄扇で自らを祓力を髪束にぶつけることで攻撃を防ぐと、急いで結界の中に入って来た。

 

 さて、薫の方はどうなってるだろ?

 

 そう思い、ふと応戦中の薫の方に視線を向ける。


「はぁっ!」

 

 彼女は雷を足に纏って攻撃を避けつつ、祓式で強化した刀で斬りかかっていた。すると、さっきは斬れなかった髪束が斬れて地面に落ちるのが見える。


「おっ、斬れた!」

「おぉ~! すげぇ! ……じゃなくて、一旦状況の整理するから入ってくれー」

「あ、了解」

 

 薫は持ち前の速さで髪束を避けると、結界の中に入って来た。全員が入るのを確認してから、私は話し出す。


「この結界は3分しか持たないから、手短に状況整理するぞ」

「でも、その間こっちに攻撃してこうへん?」

「それなら大丈夫。なっ? エル」


 エルの名前を呼ぶと、マスコット姿のエルがみんなの前に現れた。

 

「はいはい。ボクが囮になれば良いんでしょ」

「おぉ~、これがエルの神獣姿か」

「え、めちゃくちゃ可愛い!」

「ボクの可愛い容姿に見惚れるのも良いけど、今はそれどころじゃないでしょ」


 エルはそう言いつつ、私の方に視線を向ける。熾蓮と薫はそれに気づくと、口を噤んだ。


「さっき少しの間戦って分かったんだが、あいつはアタシたちの声とか動きに反応してる。だから、3分間アタシの祓式とエルで祟魔の気を惹かせるから、攻撃される心配はない。後、エルは自分の身が危ないと思ったら消えて良いからな」

「了解。それじゃあ行ってくるね~」


 エルはそう言うと、結界の外に出て、祟魔の気を惹かせようと動き回る。それと同時に至る所へ紅葉を出現させると、祟魔はエルと紅葉の方に意識がいっているのか、結界の方を攻撃しなくなった。

 

「それで、祈李。結界の方は大丈夫か?」

「はい、千鳥ヶ淵を中心に不可視化と一般人は入れないように侵入制限の結界を貼ってあります。ですが、時間は持って40分程度かと」

「なるほど。何はともあれありがとな。それじゃあ次にあの祟魔と戦って感じたことなんだが……」

 

 どうやらあの祟魔の髪は伸縮自在らしい。1本1本が硬く、一撃を喰らうと致命傷に繋がりかねない。だが、タイムラグもあるようだ。でも、今のままじゃ容易に祟魔へ近づけなさそうだな。他のみんなも避けるか祓式で対処するかで、必死みたいだし。


 私はひとまず思っていることをみんなに伝える。すると、祈李が話し出した。

 

「確かに秋葉さんの言う通りだとは思いますね。このままだと祓うに祓えないです。後、遠くから見ていて思ったんですが、あの祟魔、あの場から一切動いてないんですよね」

「え、そうなん!?」

「見てなかったんだ……」

「いや、避けるのと防ぐのに必死で……」

 

 薫からそう言われた熾蓮は、申し訳なさそうな表情で軽く謝る。

 

 動いてないとなったら、水辺でしか活動できないタイプなのかな。

 

 私は祟魔の方をチラリと見る。確かに、祈李の言う通り動いてない。そして、囮を務めているエルの方は、予め設定してある能力のバリアで防いだり、烏の翼で回避している。紅葉の方もある程度の攻撃は防いでくれるようだ。

 

 私が視線をみんなの方に戻すと、薫が話し始めた。

 

「それで、どうする?」

「と、言われてもな……。1回俺の祓式で全部の髪を燃やしてみるんはどうやろ?」

「んー、それなら攻撃も来なくなるかもですね」


 確かに、1番初めに川へ引きずり込まれそうになったときも、熾蓮は炎で燃やして回避できた。となると、熾蓮の炎で燃やしている間、一気に突っ込むってのもありだな。


 そう考えていたら、結界外で必死に攻撃を避けていたエルから念話が入った。

 

『秋葉ー! もう限界なんだけど!』

『なら、エルは休んでてくれ。ありがとな』

『やったー! それじゃあ後は頑張ってね~』

 

 念話でそう話すと、エルは攻撃を交わすと同時に消えた。すると、結界の方にも攻撃が開始され、どんどんヒビが入っていく。

 

「じゃあそれで。熾蓮よろしくな。祈李はそのまま援護を。薫は祓式を使いつつ、近づけそうなら近づいて祟魔を祓ってくれ」

「任せとき」

「了解!」

「分かりました」


 それじゃあ反撃第2ラウンドといきますか!


 結界が完全に破壊されるのと同時に、みんなその場から散り散りに分かれて、再び攻撃を開始するのだった。

 




――――――――――――

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