第38社 貞〇って実在したんすね……

 烈級祟魔を追いかけるも、変にすばしっこいので捕らえることができずにいた。けど、幸い今は深夜で人はいないので、思う存分パルクールや祓式を使うことができる。私は橋の欄干から近くの建物の屋根に上って、勢いそのままに川沿いの道まで一気に飛ぶ。無事に着地を成功させると、そのまま烈級祟魔の後を追いかけた。

 薫と熾蓮も同様に飛んで着地すると、川沿いの道を爆走していく。


 あ゛ー、ムカつく! なんでそんなに速いんだよ。さっきから桜で攻撃してるけど、交わされるし、当たったとしてもそんなに大した傷追わせられてないし。


 すると、私の前を行っていた薫から念話が入る。


『あのさ、祓式使ったら追いつけると思うんだけど、良いかな? 多分君たち置いてっちゃうことになるけど』

『なら先に行ってくれ。アタシらじゃ追いつけそうにないしな』

『了解!』


 薫との念話を終えると、彼女は祓式を足に纏わせ、猛スピードで烈級祟魔を追いかけて、斬りかかる。すると、祟魔は靄となって消えていった。


 よし! 残るはもう1体!


 消滅を確認し、内心でガッツポーズを決める。すると、祈李が遅れてやってきた。

 

『お待たせしてすいません。念のため、先生に私たちがどこへ行ったのか、知らせておこうと思いまして』

『あ、そういうことやったんか。わざわざありがとうな』

『どういたしまして。それで、今どうなってます?』

『薫が1体斬ったから、後は1体だけになったぜ』

『了解です』


 にしても、この方向。どう見ても千鳥ヶ淵の方だよね。それに、あの烈級祟魔は何で逃げてるんだろ。別に私たちを恐れてるってわけじゃなさそうなんだよな。取り敢えず、追いかけてたら分かるか。


『ともかく、あの祟魔は倒さずに泳がせた方が良いかもな』

『どうして?』

『多分、あいつは千鳥ヶ淵へ向かってる。依頼にあった烈級祟魔となんか関係がありそうなんだよな……』

『なるほど。よし、ならこのまま追いかけてみようか』

 

 というわけで、烈級祟魔との追いかけっこが再び始まり、数分走っていると案の定千鳥ヶ淵へと到着した。河岸に立って周囲を見回してみるが、さっきまでいた烈級祟魔どころか、ここに来る前までいた拙級祟魔すら見当たらない。


「あれ? どういうことだ?」

「祈李、ここに貼ってあったお札は?」

「正常に起動してますよ?」


 ん? ということは私たちがここに着いた途端、祟魔たちは一斉に消えたってこと?


 この何とも不可解な状況に頭を悩ませる。すると、先に着いていた薫がやってきた。


「あ、どうだった?」

「3人が来るまで周辺を警戒してたけど、特に変わったことは起こってないよ。でも、いるのはいるね。何故か気配を極力絶って茂みにみんな隠れてる」

「んー、隠れてるのか……」


 隠れてるってことは、攻撃意志はないってことかな?


 神経を茂みの方に集中させて祟魔の気配を探ってみるけど、私の予想通り、攻撃意志はなさそうだ。

 となると、後考えられるのは、何かを待ってるか何かを恐れてるか……。んー、どっちだ。多分、この場合だと――

 

「――皆さん、足元!」

「へ? うわ、危なっ!」


 祈李に指摘されて、足元を見てみると、黒くて長い束のようなものが自分の足に巻き付こうとしていた。熾蓮はそれを炎で燃やし、私は瞬時に避ける。薫と祈李も同様にその場を飛びのいて、後ろに下がった。私は何が起こったのか、さっぱり分からないままみんなと顔を見合わせる。


「い、今のって……」

「俺らが避けたら一気に川の中に戻っていったけど、あれ髪の毛ちゃう?」

「ってことは、もしかして」


 私たちは長い髪の毛が退いたという川の方をじっと見つめる。あの千鳥ヶ淵の中に、依頼に書かれていた烈級祟魔がいるってこと? でも、昼間はそんな気配一切感じなかったしな……。


 とにかく、いつでも刀が抜けるように鞘に手をかけておく。すると、川の表面からぶくぶくと気泡が現れ始めた。私たちは警戒を一層強める。茂みに隠れていた祟魔たちからも怯えたような気配が感じられた。


 祟魔たちが怯えるほど、あの中にいるやつはヤバいのか。

 

 次第に気泡はどんどん範囲を増していき、水しぶきが飛ぶと同時に髪の毛の束がこちらを襲ってきた。私たちはそれを瞬時に見切って避ける。髪の毛はそのまま、後ろにあった複数の木に衝突すると川の中へ戻っていった。その直後、バキバキバキという音が鳴ったので、思わず後ろを見る。


「ちょいちょいちょい!」


 髪束の衝突した木がこちらに倒れてくる寸前だったので、慌ててその場から安全な場所へ退く。木はそのままドスンという音を立てて私たちのいた場所へ倒れた。


「いや、怖すぎやろ」

「ただもんじゃねぇな」

「――何か来るよ!」


 私と熾蓮は薫の声に反応して川の方を見る。すると、川の中から黒い物体が現れた。いや、正確には全身を覆えるぐらいの黒髪を纏った祟魔だった。それは水面すれすれに浮いており、私たちの方を向いている。

 

 いや、貞〇かよ。

 

 


――――――――――――

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