第36社 女は怒らせたら怖い
「なるほど。そういうことだったんだね」
エルは私から一連の説明を受けると、納得してくれた。
「そう。だから、ここを拠点にしてもいいかなって」
「まぁ、良いんじゃない? 最終的な決定権はこの神社の宮司である秋葉にあるんだから」
「あ、そっか。なら、もうここを拠点に今回は動くってことで」
そういえば、ここの責任者って自分だったっけ。今は私以外、北桜家の人間はいないし、自然とそうなっちゃったわけだけど。もっと自覚持たないとな……。それで、寝泊まりする部屋を決めないと何だよね。まぁ、ここは無難に男子と女子で分けるか。
「えっとね、お客さん用の部屋が何個かあったはずだから。そのうち1つを熾蓮と祈李で使って。確かその隣の部屋も空いてたはずだから、先生はそこにお願いします。それで、薫はそうだな……。私の部屋でも大丈夫?」
「あ、うん。そっちが良いなら私はそれで大丈夫だよ」
部屋割りが決まったので、ご飯ができるまではゆっくりくつろいでもらうことになった。ちなみに、私の料理スキルはそこそこだから、まぁ味の方はあんまり期待しないで貰いたいな。中学からほぼ1人暮らしみたいなもんだったから、最低限の家事力は身に着けているつもりだけどね。
◇◆◇◆
そして、夕食後。ご飯を食べ終わった私たちは、今後の動きを決めることになった。
まず、先生から今の渡月橋の状況を聞かれる。
「秋葉、今んところ特に異常はないか?」
「そうですね。特に怪しい人物とか祟魔らしき影が結界内に入った感じはしてませんよ」
「よし、祈李の方も問題ないか?」
「渡月橋の方は特に。千鳥ヶ淵の方は祟魔がちらほら出て来てますけど、特に何かをする様子はありませんね」
特に異常はなしか。千鳥ヶ淵の方にいる祟魔も、祈李によれば、人間に危害を加えない
「それを踏まえてどうする?」
「んー、ここは2・2で別れて交代制で見張るしかないんじゃないかな?」
「そうやな。時間はいつまでにする?」
「和尚さんからの連絡で、前は午前0時頃に異変が発生したって聞いたから、23時半ぐらいには一旦、全員で集まった方が良いかもね」
「了解や」
その後、じゃんけんで組み分けをすることに。熾蓮と薫が先に見張りをすることになったので、私と祈李はここで先生とエルと一緒に待機だ。熾蓮と薫を境内の鳥居まで見送ると、一旦家の中に戻る。
「にしても、大変だね~」
「これもあくまで授業の一環だから仕方ないよ」
エルと一緒に先生たちのいるところへ戻る。すると、祈李が机に突っ伏して寝ていた。
「……えーっと?」
「あ、戻って来たか。多分この調子やと、明け方近くまで動かなあかんくなるやろうし。今のうちに少しでも寝させといたほうがいいやろうと思ってな」
「あ、なるほど」
「というわけで、秋葉も寝といた方がええで」
「わ、分かりました……」
いや私、夜型人間だからそんなに眠くないんだけどな……。まぁ、目瞑っとくだけでもいいか。
私も祈李と同じく机に突っ伏して目を閉じる。
次に目を開けたときには1時間経っており、熾蓮たちと交代しなければいけない時間になっていた。
「げっ、もうこんな時間じゃん」
「そろそろ行きましょうか」
祈李の言葉に頷くと、急いで神社を出て渡月橋へと向かった。
寝るつもりなかったんだけど、疲れてたのかな。まぁ、でも眠気は完全に消えたしいっか。
渡月橋で待機中の2人と合流すると、何か変化はなかったか訊いてみる。
「いや、特にはなかったで。けど、ライトアップが終わったから人は減りつつあるな」
「てなわけだから、私たちは一旦戻るね」
「オッケー、ありがとう」
薫と熾蓮は報告を終えると、そのまま神社の方へ歩いて行った。
さて、ここからは私たちの番か。何もないことを祈るけど、それはそれとして暇だからなんか起こってほしいっていう気持ちもあるんだよね。
そう思いながら待つこと1時間。こっちも特に異変はなく交代となった。メンバーをチェンジしようということになり、今度は熾蓮と祈李が見張ることに。私と薫は一旦、神社の方へ戻ることになった。そうして、予定していた23時半を迎え、先生も含めて全員が渡月橋に集合。現状の確認をしつつ、また待機ということになった。
「マジで何も起こらんな」
「そういや、千鳥ヶ淵の方は?」
「祟魔の方にも動きはありませんね。そろそろ何か起こっても良い頃なんですが……」
それはそう。でも、周囲にいるのは酔いつぶれた酔っ払いぐらいだしな……。これから戦いになる可能性だってあるから、一応避難させといた方が良いか。確か近くに交番があったはずだから、そこに預ければ良いよね。
というわけで、酔っ払いどもを交番に預けるため、一旦首筋に手刀をお見舞いする。
「なんで私たちがこんなことを……」
「被害者が出ても困るし、しゃーない――」
「――おらぁ!」
「へ……? か、薫さん?」
斜め後ろからドスの効いた声が聞こえてきた。恐る恐る振り向くと、薫が酔っ払いの股間を蹴り上げているのが見える。
「あー、ちょっとおっさんに絡まれたから股間に一発かましてやっただけだよ」
「な、なるほどね……」
いや、怖いわ。ほら、男子たち引いちゃってるじゃん。一気に青ざめた表情になってるし……。
渡月橋から歩くこと2分。交番にたどり着いた私たちは、警察官に酔っ払いどもを預けると、渡月橋の方へ戻るために歩き出す。
すると、渡月橋の方から悲鳴が聞こえてきた。それと同時に大量の祟魔が結界内に侵入していることに気づく。
「結界内に祟魔が大量発生。数は少なくとも30体。階級はほとんどが荒。烈も一部混じってますがこの人数でなら対処できるかと。後、内部に女子中学生が2名います!」
「秋葉はそのまま不可視の効果を結界に追加! 他の3人は戦闘の準備しとけよ! 俺は先に学生2人を救出に行ってくるわ」
「了解です!」
先生からの指示を聞くと、私たちは返事をして渡月橋へと走り出す。
私は走りながら、外部から結界内が見えないように不可視化の印を組みつつ、『紅桜』に憑依する。無事に憑依できたことを確認すると、織部先生の後を追うようにして、渡月橋へと向かうのだった。
――――――――――――
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