第30社 疲れた後の甘いものは正義!

 何やかんやあって全員分の試験が終了し、帰宅後、私は寮室のベッドに寝転んだ。


「もー、無理。疲れた。寝たい……」

「この3週間で全身筋肉痛……。いくら運動が好きとは言えど流石にキツかったな……」


 体力のない私だけでなく、活発な悠までもダウンしている。この3週間で、パルクールをある程度習得、刀の扱い方から体術まで叩き込まれたので、私の身体は疲労困憊だった。

 

 明日の初任務大丈夫かな……。全身筋肉痛で動けないんだけど。


「はぁ……」

「そういや、結局秋葉って合格出来たんだっけ?」

「あー、らしいね。なんか、織部先生が言ってた」


 

 ◇◆◇◆

 

 テストの後、織部先生の元に行って結果を聞いてみたら、合格と言われた。


『え、最後の1体倒してないんですけど……』

『あれはボーナスやから、倒しても倒さんでも良かったんよ』

『ボーナス?』

『せや。このテストは実習訓練でどれだけ成長できたか見るためのもんやからな。授業のときも烈階級の祟魔なんて出してへんかったやろ?』

『あ、確かに』


 授業では祟魔との戦闘に慣れさすためか、荒級祟魔としか戦闘してなかった。先生によれば、倒せる人は倒しても良いよ的な感じで設定されたようだ。

 ちなみに、烈級祟魔が自分の苦手な虫だったのはわざとらしく、度胸試しのために用意したと先生が話してくれた。自己紹介の欄に苦手なものを記入しろと先生が言っていたのもそのためで、他の生徒のテストのときも同様に苦手なものを祟魔として登場させているようだった。

 

『まぁ、明日の初任務はなんかあったとしても、大丈夫なように先生らも一緒やからそこは安心してええよ』

『あ、了解です』

 

 納得した私はそのまま、悠たちのいるところへ戻るのだった。

 

 

 ◇◆◇◆ 


「あー、なるほどね。だからあたしのときに、目覚まし時計の祟魔が現れたのか」

「悠って朝起きるの苦手だもんね……」

「そうそう。ここに来る前は毎朝お母さんに起こされてたな……」

 

 今は私が起こすことになってるんだけど、悠の寝起きが悪すぎて毎日どこかしら負傷してるんだよね……。今朝なんか足で顎蹴られたし。しかも祓力纏った状態で。あれはシンプルに痛かった。

 

「それにしても、甘いもの欲しいな……」

「確かに、疲れた身体には糖分が必須だよね。まぁ、この時間から食べるのは罪な気もするけど……」


 悠が天井を見ながらそう言い出した。


 時計の針は夜10時を回ってるし、明日もフルで授業が入ってるとなるとな……。それに寮の食堂もこの時間じゃ閉まってるから……。

 

 そう考えていると、悠が何か思いついたような声を出した。


「コンビニ行っちゃう?」

「まぁ、門限は23時だからまだ時間あるけど。学園の近所にコンビニなんてなくない? あってもここから往復で1時間はかかるし。ほら、この学園辺境地だからさ」

「そこはほら。パルクールで短縮して……」

「悪い子だな……。まぁ、市街地で使っちゃいけないなんてルールないし。行っちゃうか~」


 ベッドから飛び起きると出かける準備を始めた。学生全員に配布されているウエストポーチにスマホやら財布やら必要なものを入れると、それを腰に巻き付ける。


 これ、パルクールで移動するときとかに便利なんだよね~。両手が空くから祟魔と遭遇したときとかにすぐ対応できるって織部先生言ってたし。


 準備を終えると、悠の方を向く。

 

「それじゃあ行きますか」

「だね」

 

 私たちは寮室を出ると、外出許可をもらうために校門の方へと走り出した。


 

 ◇◆◇◆

 

「はい、着いた。今何時?」

「えっと、10時20分だね」


 悠に今の時間を伝えながらコンビニの中に入っていく。見た感じ人はまばらなので、会計はすぐに済ませられそうだ。私たちはそのままスイーツコーナーの方へ歩いていった。

 

「んー、ならさっさと選ばないとね」

「何にしよっかな」

 

 スイーツコーナーにはカップに入ったケーキや、エクレア、シュークリームなど美味しそうなスイーツがたくさん並んでいた。

 

 どれも良いな~。早く選ばないと門限に間に合わなくなっちゃう。でも、選べる気がしない……。


「悠はもう決まった?」

「うん! これこれ」


 悠は手に持っているカップを見せてくれた。中にはスポンジケーキが入っており、その上には大量のホイップクリームが乗せられている。

 

 なんとも罪なものを選んだな……。


「めっちゃ美味しそうじゃん」

「でしょ~。秋葉は?」

「んー、そうだな」


 自分の優柔不断な性格が諸に出ており、なかなか選べない。1分間考えに考えた結果、小さいカップに入ったチョコレートパフェを選んだ。


「また罪過ぎるものを選んだね~」

「いや~、やっぱりチョコレートでしょ」

「明日ニキビできても知らないよー」

「ほら、時間ないんだから早く買う」


 私と悠は早々に会計を済ませると、コンビニを出て大通りを歩く。すると、どこからか視線を感じた。周りを見てみるが、特にこれと言って変わった様子もなく、祟魔もいない。

 

「ぽけっとしてないで早く行くよ」

「はーい」

 

 私は急いで路地裏に入ると、屋根に飛び乗って大神学園の方まで向かうのだった。





 

☆あとがき

これにて模擬訓練編完結となります!ここまで読んで、「おっ、この作品面白いぞ」と思ったらいいね・レビュー(☆)・ブックマークなどなどよろしくお願いします!

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さて、来週からはついに第1章最後の編となる嵐山編に突入します!今後とも当作品をよろしくお願いします。

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【毎日更新/第1章模擬訓練編完結】天界の代報者~神に仕えし者たちの怪奇譚~ 桜月零歌 @samedare

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