第24社 授業中の内職はほどほどに(2回目)
情報の授業が始まって10分が経った頃。私は授業で使用しているサイトのウィンドウを開けながら、身内のサイトにログインしていた。
改めて昨日憑依できたキャラ設定を見直してみるか。
創作キャラの項目をクリックして、昨日悠に見せた設定を改めて見返していく。総文字数と表記された横には、5000文字とかいう頭のおかしい文字数が表示されていた。
本当に当時の私よくやったよね……。どんだけ暇だったんだろ。確か、最後に編集したのって中2のときだっけ。設定が仕上がってから、結奈に見せたら「お前馬鹿だろ」って言われたな~。懐かしっ。そういえば、身内にしか公開はしてないけど、このキャラを主人公にして小説書いたりしたな。
どんどんスクロールしながら、当時練った設定資料を見ていく。項目には名前や年齢の他にもキャラの経歴や家族構成などがあった。
さてさて、この設定だと憑依できるんだよね。この設定と訓練のときに軽く練った設定の違いといえば……。まず、設定量が違うことでしょ。後は、イラストがあるかないかと、他人に見せてるか否か。この3つが揃ってれば、憑依の対象になるんじゃないかな。知らんけど。でも、昨日憑依した設定の子だと、祟魔との戦闘はできるだろうけど、金髪だしエルフだから正直目立つな。ってことはだ。そこら辺を考慮しながら設定を練ればいけるのでは? 確か、だいぶ前に軽く練った設定の中に良いのがあったはず……。
再びスクロールしながら該当するキャラを探していく。けど、そこで気が付いてしまった。
めっちゃ視線感じるんだけど。 絶対見られてるよね⁉
このPCルームでの授業は4人ひと固まりのテーブルで作業をしている。ということは、さっきから感じている視線は私を除く3人となる。一旦手を止めると、恐る恐るメモから顔を上げる。すると、案の定近くの席のたちがこちらを見ていた。
「あっはは……」
「なぁ、さっきから何してるんや?」
「い、いや、午後の授業で使うものの準備と言いますか、何と言いますか……」
隣の席に座っている熾蓮さんに、小声でそう訊かれると、冷や汗をかきながら応える。
「授業で使うものってなんかあったっけ?」
「あー、いや特にはなかった気が……。えっと、祓式を使用するのに必要なものかな」
「ふーん、なるほどな」
授業が始まってから30分が経ち、授業で出された課題をやりながら、設定を書いていた。すると、身内のサイトから着信が入る。
ん? こんな時間に何だろ? まだ結奈も舞衣も授業中だよね?
不思議に思いながら、サイトのチャット欄を開ける。
結奈:よっ、頼まれてたやつできたぜ。
秋葉:ナイス! 送ってもらっても良い?
結奈:ちょっと待ってな。
結奈:ほい。これで良いか?
秋葉:おぉ~! ご丁寧に色まで! ありがとうございます!
結奈:ま、授業の合間合間に描いてたから、いつもよりクオリティは下がってるけど。
秋葉:全然大丈夫! 今度お礼するね!
結奈:よぉし。それならスイーツ食べ放題で頼む。
秋葉:りょーかい。
送られてきた立ち絵イラストを見てみると、和風の衣装を纏った女性が描かれていた。紺の袴に桜と紅葉の柄が入った着物を纏い、厚底下駄を履いている。また、腰には打刀が提げられており、ミディアムロングの髪を赤リボンで纏めていた。
おぉ~、これが『
関心しながら創作キャラである『紅桜』のイラストを見ていると、授業はいつの間にか終盤に差し掛かっていた。
授業終わるまで後、10分もないのか。こりゃ早く設定の方も仕上げなきゃね。
更にタイピングの速度を上げていくのだった。
そうして、授業終わり。クラスの大半の人がお昼ご飯を食べに行っている中、私と数人の生徒はPCルームに残っていた。
「あ、あのー、悠はともかくなんで熾蓮さんたちもいるんですか……」
目の前には悠の他に、同じテーブルに座っていた熾蓮さんや薫さんがいた。
「なんか面白そうやし」
「秋葉さんの祓式が気になるので」
「は、はぁ……」
そんな興味津々な目で見ないでほしいんだけどな……。別に大して面白いものでもないってのに。
気の進まないような顔をしていると、悠が私の肩に手を置いた。
「ってことらしいから、さっさとやっちゃいなよ秋葉」
「はいはい。……それじゃあ念のため、少し離れてもらえませんか? 何が起こるか分からないので」
そう言うと、みんな一定の距離まで下がりだす。全員下がったことを確認してから、私は結奈に描いてもらったイラストを脳裏に思い浮かべる。
目を瞑って強く念じると、身体が光に包まれた。光が収まったのを感じて目を開けると、視線がいつもより高いことに気が付いた。
「お、これは成功した感じか……?」
少し視線を下げると、いつもの制服ではなく桜と紅葉の着物が視界に入った。腰にはちゃんと日本刀もある。つまり憑依が成功したということだ。祓式がやっと自分のものになったのだと実感した、私はガッツポーズを決めるのだった。
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