第21社 技名を叫んで良いのは二次元だけ

「憑依って言うと、霊とかを自らの肉体に移すとかそういう……?」

「まぁ、その認識で間違ってはないはずや。調べた感じやと、代々北桜家は創造の祓式の家系や。君の両親は、8歳まで家から出たらあかんって言うてたんやろ? それなら、秋葉は憑りつかれやすい体質で、祟魔に憑りつかれへんようにそう言ってたんとちゃうやろか」

「なるほど。それなら両親が頑なに家から出るなって言ってたのにも納得がいきますね」


 当時は訳も分からないまま、言うこと聞いてたんだけど……。まぁ、幼い子に「あんたは憑りつかれやすい体質だから外に出ちゃダメ」なんて言っても、理解できないもんね。……それにしてもだ。

 

「いや、怖いですよ。そんな祓式」

「でも、ここに入ったからにはやってもらわんとな」


 ふむ。やっぱり、今からでも編入届出した方が良いかもしれない。大体、憑依なんて怖いじゃん! よく、テレビの心霊特集とかで見るけどさ……あれを自分がやるなんて無理。まぁ、そうも言ってられないんだろうけど……。どうしたもんか……。

 

 すると、隣で話を聞いていたエルが、何かをひらめいたような表情を浮かべる。


「ねぇ、何を憑依させるかにもよるんじゃない?」

「というと?」

「北桜家は代々創造の祓式の家系なんでしょ? なら、それに関係することじゃないかな?」


 確かにそうだ。でも、創造を憑依させるってどういうことだろ……。


 頭を悩ませていると、先生から質問をされる。


「秋葉は幼少期の頃、両親にしてもらったこととかないんか?」

「してもらったことか……。そういえば、よくアニメのDVDとかゲームのカセットを持ってきてもらってましたね。後は、それがきっかけで創作をし始めたんですけど……。……ん?」

「どうしたんや?」


 確か、お母さんから創作のやり方とか教えてもらってたんだよね。外に出られないからって。それで、北桜家は創造の祓式なんでしょ? ……ってことはまさか、創作したキャラを憑依させるとかじゃないよね? 今思い返せば、エルの設定練ったとき、力が一瞬抜けたのも……。


「もしかしたら、私の祓式って創作したキャラを憑依させるとかじゃないですかね?」

「なんでそう思たんや?」

「実は創作を始めたきっかけもお母さんから勧められたからなんです。それに北桜家の祓式の系統も併せて考えてみると……」

「あー、なるほどな。でも、問題はどう憑依させるかよな」


 憑依の方法か……。となると、絶対に必要なのはキャラの設定だよね。取り敢えず簡単に作ってみるか。後はそうだな……。祓式の発動の仕方って何なんだろ。これは先生に訊いてみよ。


「あの、祓式の発動のさせ方って例えばどんなものが?」

「基本は念じることで祓式が発動する。イメージできてへんと形になるもんもならんからな」

「なるほど」


 イメージね……。よく異世界系のアニメとかであるやつか……。多分これは大丈夫でしょ。イメージ力がなきゃ今頃、創作なんてできてないしね。取り敢えずはキャラ作りからかな。


「先生、少し時間くれませんか? 祓式を発動できる方法を思いついたので」

「おっ、ええで。ほな、その間に俺は他の子らの指導してくるわ」

「分かりました」

 

 先生はそう言うと、悠たちの方へと走っていった。どうやらこれから、祓力を使って自己強化の練習に入るらしい。私はというと悠たちの方を見ながら、頭の中で設定を考えていく。


 そして15分後。簡易的なキャラ設定が完了したので、先生の元へ行くことに。


「おっ、どうや?」

「取り敢えず、簡単なキャラ設定はできました」

「よし。ほな、さっそくやってみよか」

「分かりました」

 

 えっと、確か念じるんだよね。今回練ったキャラは白髪ポニテで緑眼のキャラなんだけど、イメージか……。黒のスーツ着てて、それから勝気な性格でしょ……後は――


 脳内で自分の作ったキャラをできる限りイメージする。しかし、これと言って自分の身に変化は起こらない。


「んー、変わってないか」

「そうだね」

「せやな……。あ、そのキャラの名前呼んでみたらどうや?」

「いや、恥ずかしっ!」

 

 先生の案は最もだけど、やっぱり恥ずかしいでしょ。自創作のキャラ名呼ぶとか……。でも、そんなこと言ってたら進まないしな……。うっし、こうなったら恥を捨ててやるしかない! えーっと名前は確か……。

 

「『白蓮びゃくれん』」

 

 先ほどのイメージにプラスして、キャラの名前を言ってみる。

 

 ど、どうだ……? い、いけた?


「なーんにも変化なし!」

「ただ恥晒しただけじゃん!」


 はっきりとエルにそう言われ、撃沈した私は身体中が熱くなるのを感じながら、両手で顔を覆ってしゃがみ込む。

 

 ガチで穴掘って埋まりたいんだけど……。こんなの黒歴史じゃん……。

 

 すると、エルがそんな私を見て呟く。


「ま、こうなったらできるまでやるしかないんじゃない?」

「せやな。幸いまだ時間はあるし」

「はい……。頑張ります……」


 それからというものの、ひたすら祓式を発動させるために試行錯誤する。が、何を試しても結果は失敗。ひとまず、祓力の扱いを学ぶことになるのだった。

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