第18社 争奪戦

 休日を挟んで月曜日。今日から授業が始まり、今は3限目。ここまで2限受けてきたけど、至って普通の授業内容だった。授業自体は中学のころの復習のようで、正直つまらない。いや、私の場合そもそも勉強そのものがつまらないんだけど。


『あんたは呑気で良いよね』

『まぁね』


 エルは他人から見えないのを良いことに、私の机にぐで〇まのように伏せていた。私はというと、板書を取りながら、創作の設定を練っている。


 世界観は決まってるから、後はキャラ設定を練るだけ。さて、どうしようかな~。


 どんなキャラにしようか考えながら、板書を写していく。前から2番目の席で先生にバレるのでは? と思っていたけど、エルが設定資料のメモ帳を見えなくしてくれているので、堂々と内職し放題になった。マジでありがとうエル様。

 

 ふと顔を上げて周囲を見ると、退屈なのか集中して聞いている人は半分ぐらいだった。みんな内職してるか寝てるかなので、実質きちんと授業を受けている人はそれほど多くない。それで本当に良いのかと思いつつ、私も設定を書く手を進める。


 そういえば、先週のオリエンテーション終わりのとき、悠に例の答案見せたら、見事に怒られたっけ。「代報者の階級を覚えてないとか信じられない」って感じで。それでそのあと、覚えるまで寝させてくれなかった。そう思うと、悠って案外真面目なのかな……。


 そう思いながら、ちらっと後ろの方の席に座っている悠を見る。


「えっ……」

『どうしたの?』

『い、いや。悠、寝てない? めっちゃうとうとしてない?』

『あ、ホントだ。お疲れだね~』


 前言撤回。悠って、もしかしなくてもあんまり真面目じゃないな? 多分、私と同じで興味あることには食いつくけど、それ以外は無関心というか……。そういや、寝起きもだいぶ悪いよね……。何回起こしても起きなかったり……。


 悠の寝起きの悪さを思い浮かべながら、設定を書いていると、ちょうどチャイムが鳴った。


「それじゃあこれで、授業を終わります」


 先生がそう言い、授業終了の挨拶が終わると、教室は一気に騒がしくなる。


 ノートやメモ帳を引き出しの中に仕舞っていると、悠がこちらにやってきた。


「おはよ~。よく寝てたね~」

「仕方ないでしょ……先生の声が眠くなるんだもん」

「ま、そうだよね」

「よし、それじゃあお昼食べに行こっか」

「了解!」


 私は席を立つと、財布をポケットの中に入れて、悠と一緒に食堂へと向かう。食堂はこの校舎の1階にあるので、階段を下りていく。階段を下りて、食堂のある方まで進むと長蛇の列ができていた。


「確か、食堂ってそれぞれの棟にも配備されてるんだよね? なんで、みんなこっちを使うんだろ」

「それはその食堂によってメニューがちゃうからな」

「うぉ、織部先生」

「あ、どうも」

 

 そう言って話に入ってきたのは、織部先生だった。突然現れた先生に私と悠は驚く。

 先生もここへ食べに来たのかと思っていると、先生が小声で話しかけてきた。

 

「君らも例のアレ狙いに来たんか?」

「アレ?」

「というと?」

「学食の中でも1番人気のカツカレーや。2週目と4週目の月曜日にあるんやけどな。毎回人気過ぎて、すぐ完売になるんよ」


 ほぇ~、カツカレーか。確かにそれは人気だよね。でも、私は敢えて見送ることにしよう。ブームが過ぎてから狙いに行った方が確実に食べられるしね。


「いや、私は別のにします」

「んー、あたしはカツカレー狙いに行こっかな~」

「おぉ~、ええな」

 

 そして、並ぶこと15分。席に着いた私たちは、お昼ご飯を食べ始める。結局、悠と先生はカツカレーをゲットすることはできず、それぞれ定食と丼を頼んでいた。ちなみに私はラーメンだ。


「ここの学食美味しいですね」

「うんうん!」

「せやろ? 他にも日替わりでいろんなもんが出るから楽しみにしときや」

 

 なんで先生が自慢げなんだろ……。まぁ、いっか。

 

 15分ほどで3人が食べ終わると、それぞれ返却口に食器を返しに行く。


 そういや、午後からって何するんだろ。実習とは書いてあったけど……。


「あの、先生。午後から何するんですか?」

「あ、確かに気になる」

「んー、そやな。ま、始まってからのお楽しみっちゅうことで。教室に次の場所の指示書いてあるからそれ見てみ。ほな」


 先生は言うだけ言うと、食堂から出ていった。取り敢えず、教室に行けば何か分かるかもしれない。私と悠はさっそく4階へ続く階段を上り始めた。


 ◇◆◇◆


 えーっと、黒板黒板っと。


 教室についた私たちは、黒板に書いてある文字を確認する。


「何々、『手ぶらで試練場Aに集合』だってさ」

「んー、なるほど? 取り敢えず行ってみれば分かるんじゃない?」

「そうだね。てか、試練場がどこにあるか分かる?」


 隣で黒板を見ていた悠にそう訊くと、何故かジト目でこちらを見てきた。

 

「秋葉、さてはオリエンテーションのとき、ちゃんと説明聞いてなかったな?」

「バレたか……」


 私は苦笑しながら、悠と共に試練場Aに向かうのだった。

 

 


☆あとがき

これにて第一章入学編完結となります!ここまで読んでくださり本当にありがとうございます。これからも本作をよろしくお願いします。

ここまで読んで面白いと思った人はいいね・ブックマーク・レビュー・コメントなどよろしくお願いします!


次回からは第一章模擬訓練編に突入するので、よろしくお願いします。

 

 

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