第17社 テスト中の睡魔には抗えない


 ヤバい……。眠い集中できない……。もう寝ていい?


 私は絶賛、目をこすりながら学力テストを受けていた。


 本日は1限から3限がテストで、4限目が健康診断なんだけど、この眠気のせいでどちらも上手くいかなさそうだな……。


 ちなみに今は2時間目で私の苦手な英語だ。

 

 いや、なんで日本人なのに、英語学ばなきゃいけないんですかね~。本当に。


 目の前の問題と眠気に抗いながら、1問1問着実に問題を解いていく。ラストの長文読解を解き終わったころには、テスト終了5分前だった。


 なんとか間に合った~! え、解き終わったんだし、寝ていいよね? 5分だけだけど。


 そう思い、寝る体勢へと入る。目を瞑ると、ものの10秒で意識を飛ばした。



 そして、5分後。予定通りチャイムが鳴ったので、私は起きて回収係の薫さんに答案用紙を渡した。担当教員が係の人からもらった全員分の答案用紙を確認すると、休み時間に入る。

 

 えーっと、次のテストは現代文か。それじゃあ、さっさと終わらせて、睡眠時間に充てよう。


 そう考えて、再び寝る体勢に入ろうとすると、後ろから肩を叩かれた。


「はい、どうしましたか――ってなんだ、悠か」

「どうも。あたしで悪かったね。っと、はいこれ」


 少し不機嫌そうな悠から、折りたたまれた1枚の紙を貰う。さっそく内容を見ようと、私は紙を開く。すると、そこには何やら手書きで問題が書かれていた。


「何これ?」

「昨日秋葉にした説明を問題にしてみたの。次のテストで時間余ったらでいいから解いてよ? 良い?」

「あ、はい」

 

 悠は問題用紙を渡すだけ渡して、自分の席に戻ってしまった。


 テスト中に解けって言われてもな……。バレたらまずいじゃん。どうすんのさ。


『なら、ボクがその紙見えなくしてあげようか?』

『急に出てくんな! びっくりするでしょーが!』


 エルが急に真横から話しかけてきたせいで、内心ビクッとなる。恐る恐る周囲を見回すが、エルは認識阻害の術を纏っているからか、このクラスの生徒からは認知されていないようだ。

 

『それで? どうするの?』

『お、お願いします……』

 

 そう言うと、エルに紙を渡す。エルは紙を受け取ると、私にだけ見えるように加工してくれた。


 よし、これでテスト中に解いてもバレないな。いや~、エルって便利。っと、チャイムが鳴ったみたい。担当教員は誰かな~。あ、おじいちゃん先生じゃん。これなら絶対バレずにいけそう。


 前の人から答案用紙と問題を受け取ると、悠から貰った紙を答案用紙の後ろに忍ばせた。



 ◇◆◇◆


 うっし。現代文のテスト終わり~。


 解き終わった現代文の答案用紙を見直すと、裏に忍ばせてあった紙を取り出して答案用紙の上に重ねた。


 さてさて、どんな問題が出てるのかな。えーっと、1、2、3……全部で6問か。テスト終了まで、後20分だからいけそうだな。それじゃあ解いていきますか。


『問1、祟魔を退治する者たちの総称を答えよ』

『あのー、エルさん。急に話しかけないでもらえます? 今、テスト中なんだけど』


 突然、響いてきた声に顔を顰める。

 

『いや、ごめんごめん。読み上げた方が分かりやすいかな~って』

『確かに。それじゃあよろしくね』

 

 それで、問1の答えは勿論、代報者だよね。はい次はっと。


『問2、代報者を育成する機関を答えよ』


 これも楽勝だよね。自分の通ってる学校の名前書くだけなんだから。


 そう思うと、大神学園と紙に記入する。


『問3、代報者の階級を上から順に答えよ』


 ……はい? いや、ちょっと待って。覚えてるわけないじゃん!


『頑張れ~』

『え、えーっと……。パスでも良いすか?』

『なら、次だね。問4、代報者の持つ3つの力の名称とできることをそれぞれ答えよ』


 確か、この3つの力は全部神様から与えられていて、1つ目の霊眼は祟魔を含む森羅万象を見通す力だったよね。んで、2つ目は祓力ふりょくで、確か浄化能力を持っていて、祟魔を退治する力を持つ。3つ目は祓式ふしきって言って、例えば悠とかは草木を操る能力を持つんだよね。そういや、私に祓式ってあるのかな? 何も聞いてなかったから分かんないや。


 そうして4問目も順調に記入していく。


『問5、現在、神社省じんじゃしょう観光省かんこうしょう文化省ぶんかしょう宮内省くないしょうの本部はどこにあるかそれぞれ答えよ』

 

 んーっと、確か神社省と観光省と文化省は京都にあって、宮内省だけ東京だったような。


 うろ覚えながらも、きちんと記入していく。


『問6、上記の四省には共通する警察組織がある。その組織の名前を答えよ』


 何だったっけ……。えーっと、確か日輪にちりんだったよね!


 こうして、問3以外の問題を記入し終わる。


 げっ、もうテスト終了まで1分もないじゃん。うわ~どうしよ……。取り敢えずありそうなやつ適当に書いとくか。


 紙に記入し終わると同時に、3時間目終了のチャイムが鳴った。


「はぁ……疲れた……」


 紙をエルに渡すと、思いっきり伸びをする。

 

 確か、次は男女で別れて健康診断だったっけ。ヤバい……絶対寝不足って言われるじゃん。どうしよ。まぁ、いつものことだしいっか。これが終われば休みだし、もうひと頑張りと行きますか~。

 

 周囲を見回すと、テストの回収が終わったのか、みんな廊下の方に並び始める。私も席を立つと、そちらの方へと足を進めるのだった。

 

 

 

 

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