第16社 もしや、このクラス全員個性強いな……?

 休憩を挟んで、自己紹介の続きが始まった。


 確か、前の時間は樹さんで終わったから、次はいよいよ悠か。

 

「京都市の千草神社から来た、千草悠です。立派な代報者になるために此処へ来ました。1年間よろしくお願いします!」


 悠は元気よく自己紹介を終えると、席に座った。


 うん。やっぱり悠は陽キャだ。私とは正反対。神様や、今からでも良いから寮室変えてくれないかな……。私は細々と目立たず生きていきたい人間なのです。いやでもそうなったら、このクラスで喋れる人居なくなるな。


 と、ここで右目に眼帯をつけた女子が立った。


 「ボクは津守美澪つもりみれい。大阪の住吉大社すみよしたいしゃから来ました。よろしくお願いします」

 

 水眼で、水色の長髪を下で2つ括りにした美澪さんは、そう言うと席に座る。


 ぼ、ボクッ娘だと⁉ しかも眼帯とか属性てんこもり過ぎじゃない⁉ 私、やっぱりとんでもないところに来ちゃったのかもしれない……。


「次は私ね。私は、成瀬伊予なるせいよ。奈良の天太玉神社ふとだまじんじゃから来ました。一応、日本人とイギリス人のハーフです。よろしくお願いします」


 ハーフ……ハーフか……。めっちゃ良いじゃん! え、私ハーフの子とか初めて見たんだけど⁉ しかも金髪蒼眼とか最高すぎでしょ!


「えーっと、大阪にある枚岡神社ひらおかじんじゃ来ました。枚岡祈李ひらおかいのりです。どうぞよろしくお願いします」


 紫眼で紫の長髪を下で1つ括りにした祈李さんは、おっとりとした口調でそう話す。


 うん。めちゃくちゃマイペースだこの人。癒し系か~、良いね。

 さてと、お次は……め、メカクレ⁉


 前の席の人を見て、思わずそう思ってしまう。

 

「京都市の藤森神社ふじのもりじんじゃから来ました。藤森ふじもりみやびです。みんな、1年間よろしくね」


 緑眼に短めの紫髪で右目が前髪で隠れている男子は話し終わると、席についた。

 

 いや、ホントに色んな属性の人が集まってるな。私の前の人はちょっと不思議な感じがプンプン漂ってる……。って次は私か! ヤバい何も考えてない。どうしよ……。


 頭が空っぽの状態でひとまず席を立つ。


 まぁ、適当に喋っときゃ何とかなるでしょ。


「え、えーっと。京都市の北桜神社から来ました。北桜秋葉です。分からないことだらけですが、1年間よろしくお願いします……?」


 自己紹介が終わると、即席に座って頭を抱え始める。

 

 なんで最後、はてなで終わった……⁉ 自分馬鹿でしょ! 絶対変な人認定されたって! あ゛ー、こんなことならちゃんと言うこと考えとくんだった……。おっと、次の人は……。

 

 1人反省会を開くのを中止すると、後ろを振り向いた。


「俺は御守熾蓮みかみしれん。京都市の愛宕神社あたごじんじゃってとこから来ました。よろしくお願いします」


 あれ? この声どっかで聞いたことあるような……。んー、どこだっけ? まぁ、後で聞けばいっか。

 

 赤眼で、茶髪に赤のメッシュが入った関西弁口調の熾蓮さんが席に座ると、前から4列目の窓際の席の人が立った。最後を飾るのは、茶髪のショートウルフに金目の……人だ。

 

 「龍月薫りゅうげつかおるです。奈良の春日大社かすがたいしゃから来ました。1年間よろしくお願いします」


 うん。これどっちだ? 声低いし、見た目が中性的なもんだからどっちか分からないな……。男性? 女性? えー、気になるけど、訊きにくいな……。


 頭が混乱状態の中、自己紹介は終わった。1クラス総勢16名という高校にしては少ない方だが、多すぎるよりかはマシだろう。


「よし。これで全員終わったな。ほんなら、自己紹介の紙配るからオリエンテーション始まるまでにそこに記入していってくれ」

 

 前の人から渡された紙を見る。すると、苦手なもの・嫌いなものの欄の上に必須と書かれていた。


 なんで必須事項なんだろ? ま、いっか。

 

 不思議に思いながらも、用紙に記入していく。20分ほどでみんな書き終わると、オリエンテーションが始まるから廊下に並べと先生に指示される。順番は出席番号順らしく、私はみやびさんの後ろに並ぶのだった。

 


 ◇◆◇◆


 そして、夜。寮に戻った私は、ベッドにうつ伏せで寝転んでいた。


「なんで私たちのクラスって、あんなに個性強いの……」

「知らないって。そんなことより、昨日の復習するよ。1人だけ遅れるの嫌でしょ?」

「うっ……分かりました」


 渋々起き上がると、椅子に座って悠と向かい合わせになる。悠は昨日の紙を机の上に置いて、説明を始めていく。


「はい、それじゃあまずは、代報者の持つ力の説明からね」

「えっと、確か3つに分かれるんだよね?」

「そう。1つは霊眼れいがん。私たちがエルや祟魔を認識できてるのはこれのおかげで、この力を持つ人は世界の中でもごく一部。でも、私たち大神学園に通う大半の生徒は霊眼を持ってるの」

「ふむふむ。確か、神職の家系の人は視えるんだよね?」

「うん。でも、一般人にも視える人は多いらしいよ。この学園の普通科生徒はほとんどが一般人だし」

 

 んー、実にややこしい。

 

 頭を悩ませているうちにも、悠は残り2つの説明に入ろうとする。


 こりゃ今日も徹夜か。明日は学力テストが待っているというのに……。


 深いため息を吐きながら、悠の話を聞き続けるのだった。


 

 

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