第13社 び、美少女とまさかの同棲だと……!?

「よかったら、運ぶの手伝おっか?」

「えっと……それじゃあスーツケースの方をお願いしても良いですか?」

 

 目の前の美少女にそう言われた私は、一瞬戸惑うも、その親切さに甘えることにした。私が申し訳なさそうにスーツケースの方を指さすと、美少女は「了解!」と明るい声でスーツケースの取っ手を持って歩き始める。それと同時に私は台車を押しながら、寮の中へと入っていく。


「そういや、どこまで運ぶの?」

「あー、そうですね……」


 確かこの寮は階ごとに1年女子、1年男子と言った感じで分かれていたはず。

 1年女子って確か4階だったよね……。それで部屋番号は――


「403号室です」

「403? ってことはあたしと一緒じゃん! そっか。じゃあ、あなたが北桜さんなんだね」

「え、あ、はい。そうなりますね」


 え、2人部屋とは聞いてたけど、こんな明るそうな子と一緒なの⁉ 噓でしょ……。私、この子のテンションについていけるかな……。


「だったら、引っ越し作業手伝おうか?」

「え、良いんですか?」

「勿論! 入学前だからあんまりすることないしね」

「ありがとうございます」


 同室の子にお礼を言うと、エレベーターに乗り込んだ。流石に4階まで階段で上がるのは無理だからね。少しは楽しないと。

 

 私たちは4階に到着すると、廊下を進む。部屋の鍵は同室の子が持っているようなので、部屋の鍵を開けてもらう。


「はい、ここがあたしらの部屋だよ。上がって上がって」

「あ、はい」


 同室の子は部屋に上がると、私のスーツケースを適当な場所に置いた。私は台車を押しながら中へと入る。短い廊下の途中には、簡易キッチンやバストイレが。部屋の奥に入ると、ベッドと机がそれぞれ2人分並んでいた。

 

 ホームページの画像にもあったけど、寮にしては案外綺麗にしてあるな~。

 

 部屋の中をキョロキョロ見ていると、同室の子が話し始める。


「さて、荷物も運び終わったことだし、自己紹介タイムといきますか~! あたしは千草悠ちぐさゆう。よろしくね! 後、敬語は外してもらって全然オッケーだよ」

「なら、そうするね。私は北桜秋葉。こちらこそよろしく」

「うんうん! あ、それじゃあ秋葉って呼んでも良い? あたしのことも好きに呼んでもらって良いからさ」

「良いよ。それじゃあ、私も悠って呼ぶね」

 

 なんか、すんごい悠のペースに呑まれるな……。そこが良いところなんだろうけどね。


 自己紹介が終わると、一旦私はダンボールを下ろして、台車を業者の元へ戻しに向かう。それが終わり、改めて部屋に戻ってくると、手伝う気満々なのか悠が部屋着の袖を捲っていた。


「よし、何から手伝ったらいい?」

「あー、それじゃあ、1番てっぺんのダンボールから開けていってくれないかな?」

「了解!」


 そう指示をすると、悠は手際よくダンボールを開封していく。自分より先に着いてたから、慣れてるんだろうな。私はその様子を見つつ、ダンボールの中身を取り出していくのだった。



 ◇◆◇◆



 そして荷物整理から3時間が経過し、私たちはそれぞれの椅子に座りながら談笑していた。


「そういや、秋葉はどこから来たの?」

「右京区の嵐山から」

「え、めちゃくちゃ観光地じゃん! 良いな~」

「でも、逆に人多すぎてうんざりするんだよね」

「あー、まぁそれはそっか。観光地に住んでる人も大変だね」


 そう。観光地住みの誰もが思うであろう悩み。それは人が多いことだ。何処へ行くにも、人通りの多い道を通らなければならない。人混みが苦手な人にとっては苦痛でしかないだろう。


「それで、悠はどこから?」

「あたしは西京区から。千草神社って知ってる?」

「んー、名前だけは聞いたことあるような……。もしかして、そこの人?」

「そうそう。あたしはね、お父さんと同じく代報者だいほうしゃになるために、此処へ入学するの」


 そういう目標があるって良いよね。私は何となくで来ちゃったから凄いな~。無計画にもほどがあるけど。てか、ずっと疑問に思ってたんだけど、代報者ってなんだろ。パンフレットにも書かれてたけど、ネットで調べても何も出てこないから、分かんないんだよね。悠に訊いたら分かるかな?

 

「なるほどね。……そういや、代報者って何?」

「……えっ、嘘でしょ」


 思い切って尋ねると、悠は信じられないと言いたげな表情を浮かべた。

 

 あれ? 私もしかしてやっちゃった? でも、分かんないもんは仕方なくない?


 取り敢えず、もう少し詳しめに説明を加える。

 

「その、ネットで調べても出てこなかったから……」


 そう話すと、悠は何故か頭を抱え始めた。


 いや、そんな困らせたかったわけじゃなくてね。ただ、訊いてるだけなんだけど……。


 そう思っていると、悠がジト目でこちらを見てきた。


「秋葉……、あんたそんなことも知らないで来たの⁉」

「へっ?」

「取り敢えず、1から説明してあげるから、そこに正座しなさい!」

「は、はい……!」


 私は悠の気迫に押されながら、床に降りて正座をする。


 何で私、怒られてるみたいになってるんだろ……。


 悠は私が座るのを確認すると、引き出しの中から数枚の紙とペンを取り出して説明し始めるのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る