第10社 クリスマスだからって浮かれるのも体外にしろ
そして、翌日の昼休み。またしても担任から放送で呼び出された私は、記入した進路希望の用紙を持って、職員室へと向かった。
「3年2組の北桜秋葉です。失礼しまーす」
職員室の前で自分の名前を名乗ると、そのまま担任のいる机へと歩く。
「お、やっと決まったか」
「はい! もうばっちりです!」
「ほれ、見せてみぃ」
「はい、どうぞ」
言われた通り、進路希望の紙を先生に渡す。そうしている間にも、昼休み終了のチャイムが職員室に響き渡る。先生は軽く目を通すと、私の方を向いた。
「もう行ってええで」
「分かりました!」
満面の笑みを浮かべながらそう言うと、一礼してから職員室を出ていった。
◇◆◇◆
午後の授業を終えた私が帰る準備をしていると、結奈と舞衣がやってきた。
「よっ、無事に出せたか?」
「ばっちりだよ。もうこれで進路に悩まされることもなくなったし、良かった良かった」
「お疲れ~。にしても、昨日急にチャットで送ってくるんだからこっちはびっくりしたよ」
「あはは。ごめんごめん」
私はあの後真っ先に結奈と舞衣に進路が決まったと連絡を入れた。メッセージを送信すると、2人は即おめでとうと返してくれたのだ。
本当に一時はどうなることかと思ったけど、何とかなって良かった~。
内心しみじみしていると、舞衣が思い出したように私に話しかけてきた。
「あ、そういえばさ。あの後、あんたが行く学校について調べたんだけど、何故か検索できなかったんだよね」
「へ? そうなの?」
「うん。このホームページは存在しませんってなってて……」
「ま、マジか」
あれ? 私が調べたときには普通に表示されてたのにな……。何でだろ。
「それで、裏ルートを使って検索してみたんだけど、何もでなくってね」
「う、裏ルートって……」
いや、それ駄目なやつじゃん! え、何。舞衣ってハッカー紛いのことできちゃうの⁉ え、そうなの⁉ ……にしても、存在しないってなんだ。家に帰ったらもう1回調べてみよ。
「秋葉それって本当に大丈夫なのか?」
「た、多分……」
私は自信なさげに返事をする。そのサイト、エルも一緒に見てたんだからエルにも聞いてみるか。
『ねぇ、例のサイトって本当にパンフレットに載ってあったよね?』
『うん。サイトのURLは間違ってなかったし』
『えー、ならなんで表示されないんだろ……』
『多分あれじゃないかな? 部外者以外は見られないようになってるとか……』
あ、そういうことか。それなら辻褄が合う。
自己解決していると、今度は結奈が喋りだした。
「それに大神学園なんて大それた名前の学校、1回聞いたら忘れないけどな。あたしが進路先探してる最中にそんな名前見たことないし」
「本当にそれ大丈夫なんだよね?」
「大丈夫だって! ほら、私そこの学校の人と会ったことあるし」
と言っても、昨日会ったばっかりなんだけどね。あの人が幽霊とかじゃない限りは。てか、よくよく考えたら、家にいた鳩も急に出てきたダンボールも変だったよな……。あれって結局何だったんだろ。
「まぁ、秋葉がそこまで言ってんならこっちは信じるしかないよな」
「またなんか困ったこととかあれば、私らが力になるしさ」
「2人ともありがと~! 本当に良い友を持ったよ」
「んじゃ、そろそろ帰るか」
結奈がそう言うと、私たちは教室を出る。
明日の終業式が終わればもう冬休み。今年は諸事情で冬休みの入りが遅くなったけど、その代わり1月17日ごろまで休めるらしいからラッキーだなぁ。こうなったら速攻で課題終わらせて、創作してやる! あ、そうだ。今日は12月25日だし、クリスマスケーキ買わなきゃな。
そう意気込んでいると、誰かと肩がぶつかった。
「あ、すいません」
「こっちこそすまんな。ほな」
ぶつかった相手は濃い目の茶髪に赤いメッシュがかかった男性だった。その人は私に向かって関西弁口調で謝ると、そのまま反対方向に歩いて行った。
えーっと、確か同学年の人で名前は――
「おい、大丈夫かよ?」
「進路の紙、提出したからって浮かれないでよ~」
「あー、ごめんごめん」
結奈と舞衣に軽く謝ると、再び下駄箱の方に歩き出す。
そういえば、私の行く学校って試験とかあったっけな。帰ったら調べてみるか。 多分、パンフレットにそういう情報とか載ってるだろうし。
私は靴を履き替えて校門を出るのだった。
◇◆◇◆
「えー、パンフレットはっと。あったあった」
ダンボールの中からパンフレットを取り出して、ページを捲る。入試に関する項目を探してみるが、見当たらない。普通パンフレットとかにはあるはずなんだけどな……。見落としたかな? もう一度細部まで見てみるが、そう言った箇所はなかった。と、ここでエルが現れた。
「そういえば、学園長からの手紙に入学資格が与えられたって書いてあったよね?」
「確か、そうだった気がする」
「入学資格が与えられたのなら、入試を受ける必要はないんじゃない?」
「そっか」
ってことはだ、受験勉強とかいう面倒臭いことはしなくて良いってこと!? うわっ、何それ最高じゃん! いや~、学園長様ありがとうございます。マジで一生ついていきます。
「おっしゃああ! これで自由に冬休みが過ごせる!」
「神社の仕事、忘れないでよ?」
「勿論です!」
こうして、私の冬休みが幕を開けたのだった。
☆あとがき
これにて序章完結!次回から第一章入学編に入ります。ここまでで面白いと思ってくれた方は是非、いいね・ブックマーク・レビュー・応援コメントをよろしくお願いします!
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