第9社 不審物発見……! 

「はぁー、やっと帰ってこれた……」


 私は玄関の扉を開けると、玄関のかまちのところに腰かける。デカい溜息を吐きながら、スマホで時間を確認しようと電源ボタンを入れた。


 げっ……もう8時じゃん。今から進路先考えろとか無理なんですけど……。


 私は憂鬱な気分になりながらも、靴を脱いで自室の方に向かおうと廊下の方に顔を向ける。


「え、なんで鳩……?」

「ありゃりゃ。鳩ってこんな時間も活動してるもんなんだね~」


 振り向いた先には、1羽の白い鳩がいた。確かにエルの言う通り、こんな夜に鳩が活動しているのは不思議だ。

 

 いや、確かに不思議なんだけど、そこじゃない。なんでうちに鳩がいるの⁉ 私、鳩なんか飼ってないんですけど。

 

 頭の中でそう考えている間にも、エルは興味深そうに鳩に近づこうとする。


「え、エルさーん? 何しようとしてるんです?」

「この鳩、普通のとは違う雰囲気を感じるから気になってね」


 エルはそう言いながら鳩の前まで行くと、突然ポンッ! っと煙玉の爆ぜるような音がなった。気が付くと先ほどまでいた鳩は消え、代わりに1箱のダンボールが私たちの前に現れる。

 

「うぉっ」

「いきなり何なの……。って、いなくなってるし」


 私とエルは驚いた声を上げながら、現れたダンボールに目を向けた。

 

 さっきから何が何だか分からないけど、1つだけ分かる。このダンボールは下手に開けちゃダメなヤツだ。絶対。

 

 慎重にダンボールを見つめていると、いつの間にかエルがダンボールの蓋を開けてしまったようだ。


「え、ちょっと何やってんの⁉」


 声を荒げて注意すると、エルはこちらを振り向いてこう言った。

 

「いや、何が入ってるのか気になったからつい……」

「ついじゃないっての! 爆弾とか危険なものが入ってたらどうするの⁉」

「秋葉……流石にアニメの見過ぎじゃない? ほら、だって入ってるのは唯の封筒みたいだし」

「え、あ、ホントだ」


 エルが指さす方向を見てみると、確かにダンボールの中身はA4サイズの封筒だけだった。

 

 こんなダンボールに封筒1つだけってのも、なんか怪しい気が……。取り敢えず開けてみるか。


 封筒を手に取ると、制カバンの中からはさみを取り出して、封を開ける。中には1枚の紙と1冊の冊子が同封されていた。

 

 何だこれ?


 不思議に思いながら、1枚の紙を開けて目を通していく。すると、エルが私の背後に回り込んだ。


「なんて書いてあるの?」

「えっとね……『北桜秋葉様。この度貴殿には、大神学園おおみわがくえん高等専修学校への入学資格が与えられました。入学するかはご自身の意志にお任せします。弊学の詳細は同封してあるパンフレットをご覧ください。貴殿の入学を心よりお待ちしております。学園長・西園寺美和子さいおんじみわこ』だってさ」

「んー、なるほど」


 突然、入学資格が与えられたと言われてもな……。なんか普通に怖いんだけど。宗教勧誘みたいでさ……。


 紙に書いてある文章を読み終わると、如何にも胡散臭い内容だと顔を顰めた。一方のエルはそんなことも気にせず、さっそく封筒の中に入っていた冊子をペラペラと捲り始める。


 エルったら、気になったものはすぐに開けようとするんだから。不用心め……とても神様だとは思えないんだけど……。


 私は興味津々な表情で次々にページを捲っていくエルを遠巻きに見ながら、溜息を吐く。


「おーい、秋葉」

「何、どしたの?」

「大神学園のホームページのURL見つけたから、そっちで見てみようよ!」

「はいはい。まずはやること済ませてからね」


 私は手洗いうがいを済ませてから、ダンボールを解体する。

 

 確か物置小屋があったはずだから朝起きたらそっちに持って行こ。

 

 ひとまず、ダンボールを邪魔にならないところへ置いてから、封筒を持って自室へと向かう。


 自室の扉を開けると、制カバンを適当な場所に置いてパソコンを起動させた。


 えーっと、エルが言ってたURLはっと。

 

 ささっとログインをして、検索画面に飛ぶと先ほどエルが言っていたURLを打ち込んでいく。


「……これか」

「どれどれ?」


 私とエルは順番にホームページを見ていく。すると、大東さんが着ていた制服と同じものを着ている学生が目に入った。


「あ、これって……」

「さっきの人が着てたのと同じだね」

「へぇ~、ってことは大東さんってここの学園の人なんだ」

「なになに。此処、普通の高校とは違うみたいだね」


 私はエルの言葉を聞いて、時間割を確認していく。確かに3時間目で授業が終わるなんてなかなかない。それに神道系の学校らしいから、家が神社の私にとってはぴったりだ。


 創作する上でも役に立ちそうだしね。後は――


「あ、ここ寮があるんだね」

「家が遠い人向けなのかな?」

「でも、生徒の大半が寮生活らしいよ」

「そうなんだね」


 寮生活となると……、神社を空けなきゃいけないからな。学校自体は京都市内にあるらしいけど、だいぶ上の方らしいし。ここからじゃ遠いか。……あ、そうだ。


「何か思いついたみたいだけど、どうかしたの?」

「ちょっとね。エルには頑張ってもらうことになるだろうけど」


 私はエルに対して、ニヤリと笑みを浮かべながらそう話す。

 

「? 契約した以上、ボクのできる範囲でなら手伝うよ」

「よし。なら、ちょっと待ってね」


 私はエルに断りを入れると、スマホ画面を開けて結奈と舞衣に向けてメッセージを送るのだった。

 

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