第5社 進路? 何それ美味しいの?
「おーい、起きろ~」
「もう昼休み始まってるよ~」
「ん……。ハッ! ヤバい寝てた」
眠りから覚めると、目の前には2人の女子生徒の姿が。自分が解説中に寝ていたことを思い出し、慌ててガバッと身を起こすと、目の前の2人に笑われる。
「笑うな!」
「ごめんごめん。てか秋葉、また徹夜してたのか?」
「えー、そうですよ。むしろ今回、
私は友達の1人である、
これは、あんまり良い点数じゃないな……。
私が察したような表情を浮かべると、結奈は言い訳をし始める。
「いやだって、あれは引っ掛けみたいな難しい問題作る先生の方が悪いだろうが」
「それはそう。私も大問4番の問題まるで分かんなかったし」
「まぁ、流石の
私と結奈は舞衣と呼ばれたもう1人の女子生徒の方を見る。赤縁眼鏡を掛けたポニーテールの彼女は
「ふふふっ……。私の手にかかればあんな引っ掛け問題、ちょちょいのちょいだよ」
「マジかよ」
「ちなみに、今回の最高点は私だからね」
「ひぇ~、流石だ」
舞衣は得意げに眼鏡の縁を持ち上げてそう言った。私と結奈は舞衣の凄さに驚く。
舞衣のその頭の良さ私にも分けてほしいわ~。
私は席を立つと、舞衣の机と自分の机をくっつける。私たちはそれぞれ椅子に座り、お弁当を食べ始めた。エルが羨ましそうな表情でお弁当を覗いているが、あげるわけにはいかない。いくら神様だからって、それは人のものを取るのは駄目だしね。
おかずのミートボールを口にしながら、1枚の書類をクリアファイルから取り出す。
「あ、お前まだ出してなかったのか?」
「いや、自分の行きたいところなんて特にないし……」
「早く出さないと、あの禿げに怒られちゃうよ~」
「分かってますよー」
私が手に持っているのは、進路希望の書類だ。締め切りは今日までなので、帰るまでには出さなければならない。ちなみに、結奈と舞衣はもう出したようで、それぞれデザイン系と情報系の専門学校に行くらしい。となると、こうやって3人で過ごせる時間も、あと少ししかない。
当の私はどこに行きたいかなんて決まっておらず、現在模索中。高校になったら更に勉強が難しくなりそうだし、神社のこともやらなければいけないので、進学するかも迷っている。
いや、でも流石に中卒は駄目だよね……。と言っても、行きたい高校なんてないし……。
ぐるぐる頭の中で考えていたら、昼休み終了のチャイムが鳴り始めた。
私は急いでご飯をかき込むと、5時間目の授業の準備をする。
そして、運命の放課後。5・6時間目の間ずっと考えていたけど、これと言って進路は思い浮かばなかった。
「はぁ……。マジでどうしよ……」
「まだ悩んでんの? もう適当に書いちゃいなよ~」
「なんなら、あたしとおんなじところに行くか?」
「私が絵描けないの知ってるくせに……」
私はスマホで近所の高校の情報を調べる。が、やはりこれと言って目につくものはなかった。
机に顔を伏せて、深いため息を吐いていると、教室のスピーカーからピンポンパンポーンと音が流れた。
『3年2組の北桜秋葉さんは、今すぐ職員室まで来なさい。繰り返します――』
「ヒィ……! 絶対怒ってんじゃん!」
放送で自分の名前が呼ばれて、更に憂鬱になる。
いや、出さないといけないことは分かってるんだよ? ただ、進路が決まってないってだけでね? てか、最後の方命令口調だったし……。私、あの禿げに殺されるのかな……。
「禿げ、怒ると怖いからな~。ま、気張ってこい」
「んじゃ、私たちは先に帰ってるね~」
「あ、見捨てないでよー!」
言うだけ言って教室を出た結奈と舞衣を引き留めようと手を伸ばすが、それも虚しく2人はそそくさと帰ってしまった。
仕方ない。もう覚悟決めていくしかないな。
腹を括って職員室まで行き、担任の名前を呼ぶ。すると、職員室の中に入れと指示があったので、担任の元まで向かった。
「やっと来たか。それで、もう進路は決まったんやろうな?」
「あー、いえ。……まだです」
「今まで何しとったんや。考える時間はいくらでもあったやろ?」
「いやだって……」
行きたくもないところを選んでも仕方ないじゃん。
内心で言い訳を考えるだけ考える。口に出したら殴られかねないので、勿論言わないが。
謝り倒しときゃ何とかなるだろ精神で、謝罪の言葉を繰り返す。そうしていると、向こうも諦めたのか、1日だけ猶予をやると言ってくれた。それを聞いた私は、内心でガッツポーズをキメる。
先生にお礼を言って職員室を出ると、下駄箱の方に向かった。
「さてと、こりゃあ帰ったら真剣に進路について考えなきゃな……」
上履きからローファーに履き替えて校舎から出ると、外はもう日が沈んでいて辺りは真っ暗になっている。
冬だからそりゃそうだよね……。よし、早く帰ろ。
私は早足で学校を出て、バス停の方へと向かうのだった。
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