〜過去編❽船長〜
林の奥から出て来る多くの船員達は手持ち無沙汰に船に帰って来ていた。
どうやら積荷を何処かに運んでいたらしい。
マリンは此処を海賊島と言うことにした。
そして、船長になるには、このならず者(割と常識人)達に認められる必要があった。
「元船長の娘に会いに行く。」
しかし、言う事を聞いてはくれないみたいだ。
ただ、こちらにも帰れない用事がある。
男を殺めた勢いそのままに、行くしか無いと踏んだマリンは、
「其の為に来た。」
そう言った。
其の為に来た、は言い過ぎだったが、そう告げると、頑なに言う事全てを聞き流そうとしていた船員達も素直に言う事を聞いてくれる姿勢を示した。
マリンは続けて演説した。
「私はキミ達と同じく働き口を失った者だ。此処から行く当ては一つも無い。ただ、前の船長は、私に敗れ、この写真を私は持っている。貿易は君達に任せるが、先ずは一つ、行かなければならない場所に行こう。其処から先は自由にして良い。」
そう言うと、船員達は船に乗り込んで来た。闘いかと思って、警戒するも、何の反応も無く淡々と帆を張って出航準備が整って行く。
(ん?アレ…?良いのかな。)
「ヨーソロー。」
まあまあの腕っ節の良い声が出して船員達を導こうとした。
船は出航した。
出航した後、然してマリンは考えた。前の船長との関係を。しかし結論が出なかったので、聞いてみる事にした。
「前の船長の名前はどんなだった。」
すると、
「あ〜、俺達、あの船長の事ほとんど知らねーんですわ。」
「何なら誰が船長でも、この船さえあれば構わないっす。」
「そう。なら私が船長って事で良い?」
「……」
「………ま、いっか。」
どうやら、一味は前の船長とは大した思い出がある訳でも無く、なあなあでマリンの下について来てくれるらしい。
マリンは、取り敢えずはと、先ず観光地に行こうとしたが、船員達に止められた。
曰く、そう言う真っ当な観光ができる場所の近くに行くと、船ごと拿捕されてしまうと。
一味「あー、止めた方がいい。彼処は軍の船が時折巡回しているからね。行くんなら真っ直ぐ帰りたいもんだ。」
そういう訳で、マリンは海賊島から出ると、直ぐに緑髪の娘に会いに行った。
一味は特に全員が多様な訳でも無く、編み物に熱中している者も居れば、四六時中マストの上から周りを眺めている者位で、それ以外は屈強と言える船員は一人だけだった。マリンは其の男性を副船長に抜擢すると、一味を取りまとめる様に指示を出した。
マリンが此処まで来た経緯を説明すると道中、マリンは船長としてでは無く、あくまで潮が読める航海士として信頼された。
そして、航海の腕を見せると、皆から一様に尊敬されて行った。
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