〜過去編❹決意〜
目が慣れて来た。潮に。海の色と、照りつける太陽光の反射に。マリンは充実そうに退屈にして居た。
(あーあ、このまま腹も減らずに一生のんびりできたらなぁ…)
照り付ける太陽、何処までも透明な海。心地よい潮の騒めき。
漸くバカンス気分になって来た。
(よっこらせっと。)
マリンは立ち上がると海を観察し始めた。見極めているのだ。潮の裏にある岩場の形を。
海には二種類ある。浅瀬か沖合か。浅瀬ならば何処までも海岸に沿って続いて、気付くと一周回って島を囲っている。大きな島で言えば、マリンの住んでいる国も其れが二つ、大小様々な島が数百とあった。沖合なら、囲われる事がない未だ確定していない地・。深く暗い海の底が海面までそうあれかしと定めてある。低気圧が発生する場所にして、雲がある時と無い時の差が激しく、出航する際には必ず其れと相談しなければならない。
…一つ言えば、マリンには天性の勘があった。女の勘、もとい女海賊としての勘、相手の表情、潮の表情にある裏の顔をよく読み取れた。だからこそ、前の職場は辛く苦しいものだった。お客様の為に常日頃から笑顔を絶やさない様に心掛けるその心は、歳を取っても比較的若い肌に比べ、とても狭く、苦しいものだった。
そして、マリンは見つけた。次の浅瀬、基、次の離れ小島、其の臭・い・を。
よっし、そう言うとマリンは衣服の未だ乾いていない部分を破き落とし、大きく海に飛び込んだ。幸い、空には雲一つない。其れに、着衣で溺れていないのは、マリンが普段から軽い着心地の洋服を好むからであり、万が一に備え、平均的に薄い服ではなく、所々防寒に適したアクセサリーをした子供っぽい洋服を着て置いて正解だったからである。
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