〜過去編❸夢〜


 ?「マリン〜、仕事がまだあるよ〜。次は厨房の手伝い、先ずは皿洗いから〜、カシャッカシャシャシャシャシャシャシャシャガッ、それ終わったらお客様の布団を敷いて置かないといけないから、早・く・片付けてね。それと、…、…。それと、…」

 

(素早く、しかして丁寧に。)

 

(もっと早く、早く、早く…)

 

 もっと早く、もっと早くと、気付いたら全身が熱に包まれている。仕事で疲れて出した熱と、身体を動かし過ぎて出した熱が合わさった様な熱、熱、灼熱…

 

「ハッ」

 

 起きたのはその沈まぬ太陽の灼熱に魘されたからであったが、不思議と身体は熱く無かった。

 

(あ〜、もう。何でこう…)

 

(もういっか…)

(あのまま醜い老婆になっていたよりは、ずっとマシな死に方だなぁ…)

 

 なんて、全てを諦めたマリンはふと、沖合を見た。

 

 勿論、何も無い。

 

 ただの潮騒が静かに、マリンを歓迎するかの如く、ただ時をゆっくり流していた。

 

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