第4話
未だに由那さんにチョップを続ける素甘さんを止めつつ、僕は二人に向かって手を上げる。あ、手を上げるって言っても降伏の感じでね。流石に、女の人に暴力は振るえないよ。
「もう大丈夫ですから。それと、配信されていますけど続けますか?」
配信されていると言う僕の言葉に動きを止めた素甘さんは、僕を見ると「...だったら初めから言って」と少しすねた風に言った。
それを言うならあなたも配信見てなきゃここに来れなかったでしょ、とかそう言うメタは言わないのが優しさだと思うので口を噤んでおこう。
「まあ、それの件なんですけど...配信切ります?任意で付け替えできますけど」
僕の言葉に少し悩んだ様子の素甘さんは、軽く自らの頬を叩くと「切らなくていい」と断言した。かっこいいね。惚れちゃいそう。まあ、惚れさせるのは僕だけど!(ドヤァ
そんな事を思っていると、素甘さんは突如僕に腕を絡ませてきた。
「ひゃっ」
思わずそんな悲鳴が漏れ出るけど、それすらも楽しいと言う様に素甘さんはにこにこしていた。
「ふふふ、かわいいねー」
笑顔のまま、素甘さんは僕の事を撫でる。素甘さんは案外僕と同じくらいの背丈だけど...僕が現実と背を変えていないせいか、素甘さんが盛っているのか。
抵抗もできずに撫でられていると、なんだか変な気分になってくる。ふわふわしてくると言うか、このままでもいいって言うか...僕は男なのに...。
「私に甘えていいんだよー、ずーっとね...」
耳元で聞こえるその声に、思わず肩を震わせてしまう。このままじゃ僕...ダメになりそうだ。
「そしたら、私も...いだっ」
ふいに、僕が動けるようになった。素甘さんの腕から(やや不本意ながらも)離れると、チョップを素甘さんの頭に決めた由那さんが。
「やるなら私のいないところでやって。それと...那岐姉に色目使ったら、コロス」
言い切った瞬間、おどろおどろしい色をしたオーラが由那さんの背から漏れた...気がした。
このまま甘えに行ってもいいけど、そうしたら殺されかねない気がするのでやめておく。素甘さんは残念そうに頬を膨らませているけど、貴方の横で笑顔な娘のせいだからね?
「まあ、取り敢えず。これは普通に配信サイトに投稿されて、絶賛配信中ですので。設定的にはスーパーな貢がせもできますけど、どうします?」
一応聞いてみる。まあ、素甘さんならやらない方が良いとかいうにきまtt―――
「いいんじゃないかな?それでヨイに恩って言う首輪をつけられるなら」
...前言撤回。素甘さんは案外腹黒だ。それこそ、実際に言うだろう言葉を捻じ曲げるぐらいには。いや、腹黒なんじゃなくて単純に僕を自分の物に死体だけなんだろうけど。
「...分かりましたよ。じゃあ、一応貢がせ入れといて...」
そう言いつつ、一応スーパーなあれをできるようにしておく。
ここのスーパーなあれは送金がちょっと特殊で、まず現金がSSOのサーバに届けられて、その後に配信を行っているプレイヤーにゲーム内通貨として1000倍の量でプレイヤーに渡される。
そして、それをプレイヤーが現金に変換する。この際、倍率はゲーム内通貨<トア>が1250で一円になるので、実際の還元率は...えっと、8割かな?になる。
残り二割は当然運営がもらうことになるけど、今はともかく落選した人ももう少しSSOに興味と関心が向けられればもっと儲けられるんじゃないかなと思っている。
『【アバロン】¥50,000 ヨイは男ですか?それとも女ですか?』
『ないスパ』
『ないスパ』
早速スパチャが飛んできて、僕は驚く。慌てて素甘さんを見ると、親指を立てていた。意味不明。
でも、来たからにはちゃんと答えないとね?
「男で「女だよ」」
「...おとこd「女だよ」
「―――はい、女です。...と見せかけて男だ!素甘さん残念、僕の方が一枚上手なのだよ!」
素甘さんに被せられない様に認めたふりをして、被せられないとわかったら普通に言う。やっぱり僕ってば天災。まちがえた、天才。
『【ブラックわんこ】¥3,000かわいい』
「...なんでそのコメントが出るんだよお――――!」
『配信は終了しました』
怒りの配信ブッチを行って、僕はついでにログアウトもしてしまおうとして―――素甘さんと由那さんが心配なので、結局残ることにした。
「じゃあ、此処からは探索するね。最低限ナイフはあるみたいだし、動物がいてもこれで狩れる」
素甘さんはナイフをくるくるさせる。そのまま指が落ちるのではと冷や冷やしたけど、そんな事が無い様で安心安心。
「とりあえず、メニューを開いて島の概形確認。そうじゃないと始まらない」
素甘さんの、妙に慣れた説明で僕たちはメニューを開いて、上から4番目にあるマップ機能と言うものを開いてみる。
【称号:『地図を見る』を取得しました。10スキルポイントを入手しました】
開いただけで勝手にポイントが追加されるのはいいね。スキルポイントって、スキル強化にとんでもなく消費するみたいだし。
「...なんじゃこりゃ」
そこに映っていたのは、方位磁針から針を抜いたような、そんな形の島だった。
まん丸になっていて、4つの方位が切り裂かれている...ように見えるけど、多分実際は橋やらなんやらあるのだと思う。じゃなきゃ行き来出来ないし、何がエルドラドだって話になるしね。
「...このままじゃよくない。滝つぼに飛び込む」
「滝つぼ?そんなのどこにあるんですか」
違和感を覚えて問うと、素甘さんはニヤリと一言。
「この島の中央に行く」
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