33.卑下
或考えに 或いは一つの考えの結論に達する前に
其れらをひっくるめた別の考えに不安を覚え 数秒後には
何故か 若しや此の不安をずっとは覚えていられないのではないかと
又新たな不安に駆られている間に 初めの不安と共に其の不安の原因でもあった
別の考えすら忘れてしまえば良かったのにと
もう 何うでも良くなった筈の「或考え」や「一つの考え」そして「結論」
此れらを別個にして見ても ひっくるめてしまった事は事実で
根本的に事実をひっくり返せるのは嘘許りか もう三つはあると
例えば 嘘でも吐いて見た私の利己主義が
未だ社会に認められていないのか何うかすら 確かめる勇気を
一つの笑い話如く語られて来た 『勇気のばら売り物語』を参考に
見知らぬ街迄旅しにゆく事はあれど 然れど けれど
実際問題 束でしか売られてはいなかった勇気に 手もつけられぬもっと前に
私が何処の社会でも未だ認められていなかったのを思い出す
何うでも良い事で埋め尽くされている私の知識
溢れた果てない考えの中に 一つでも正しいものがあって
其れが 私の考える「正しい」に当て嵌っているのなら
其れだけで私は安堵するだろうし はっきりと知る事もできる
私の彼の主義というものが 私の理想郷なしには存在し得なかったとは言え
此れ程詰まらぬ完全な自我を創り出すと 一体 誰が予測できようか
何時何時 隣の見知らぬ玄人の其れが見えるとも知れぬ先々で
確と受け止める心意気など 嗚呼 どうせ勇気と同じで
私の脳裏でしか観る事ができないのだろうか
――時を経れ と言われる迄もなく 止める事も出来ない時間の波が
どうしてか 二度 私の「或考え」に打ち寄せている
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