32.夢の中
閃光の中を直走る夢の中は 可能性を手にした僕が 唯一 身体の存在を嘲られる場所
そんな風に思っている事が 何処かにいる神様に知られでもしたら
神様 何処かで泣いてしまうかも知れない
その事を知った僕もまた泣いて 身体の存在を尊ぶのなら
ぜひ 君と夢の中で対話したい 可能性を捨てて 夢が覚めるまで 足を着けていよう
そして いつの日か「じゃあね」って 必ずの別れが来ようとも
その後 心にポッカリと穴が開いたとしても「ばいばい」って 絶対に言わないと
もう 後悔してさ 泣きじゃくって 取り返しの付かない事になるんだ
握った手の温もりよりも その事を覚えているなんて余計に悔しくって・・・
でも 万一そうなってもいいように 何処かにいる神様にだけは知っていてほしい
僕が足を着けていたのは 一時の喜びを感じたかっただけで
決して 悔恨の情なんてものを味わいたかった訳ではないのだと言う事を・・・
多くの不可能が 感動すら忘れさせた此処には 喜ぶべき不屈の身体があり
その事を知っていればこそ 薄目で見た右手の形に心躍る
しかし 知らずもがな 足の砕けた僕がその時以外に 手の存在を
片手だけでも知りたいと思うだろうか
せいぜい痛みと温度ぐらいしか知る事ができないと言えば 少少物足りない気もするが
どうだろう あと二三付け足したその手の機能に 何らかの価値を見出せるまでに
この汚らしい世界で 僕は丸みに触れて何か実感できるとでも言うのだろうか
曖昧で抽象に過ぎない「何らか」「何か」なんて代物に 心を燃やす価値はない
そこまで 取るに足らないとぞんざいに扱った右手を 一体 まだ見ている理由を
考え倦ねている合間に 再び 夢に落ちるのだと気付いた僕は 素直に目を閉じた
一度そうした内に「また君と話が出来てうれしい」と 別れを惜しみつつも そう言った
閃光の中を直走る夢の中で 僕は やっとあの泣いている神様を見つけられたんだ
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます