「詩集 永劫」(2008~2017)
舞原 帝
31.人間(1/2)
まだ内に無い感情を空の脳みそに注ぐ しかし それは
頭蓋骨の切れ目に染み込んだままで まだ 中枢には無いようだ
それでも 舌が口元を舐め回し 唾液が全てを溶かせはしないかと
無くなってしまった顎が いつの間にか足下に落ちている
そうやって 見下ろした拍子に首根っこが裂け出し
脊髄が露わとなれば いつしか 突き出たそれ一つとなってしまった
不気味に多くの音を立て 腐ってゆく身が血肉と成り果てるのは
時間の問題なのかもしれないと 血溜まりの中で考える己は もう
何処にもいなくなるのだから やっと 本当にやっと過去に別れを告げられる
そんな気が無性にして 酸化し始めた場所に波が起きたのは 誰かの妄想とか
そういった類の空の脳みそでも考えられたであろう非現実の中で起きる 現象
だから 世界がひっくり返っても 否応無くそれはいつまでも蔓延っている
差詰め
もしかすると 愚かな事では無かったのかもしれない そんな気が無性にして
膝を曲げて手にしたされこうべと向き合う 途端に身を震わせる永劫回帰
彼我との間に有る埋めようも無い差を 無常にも感じた
そうして 永遠の中に心房を曝け出せば 色色は褪せてゆく 次いで
触れた右手の感覚が無くなると同時に 忘れていた左手の方はその虜となった
だが 恰も平等を望んでいると下人宜しく それでも両の手を合わせる時には
既に死に別れを告げており そのうちに遣って来るというそれを まぁ・・・
その頃には 素直に受け入れてやらないでも無いと いつしか 高みに身を置いていた
きっと 何者にもなれずに知らぬ終りを迎えるのかと思うと ほんの少しだけ
胸の奥に悲しみが押し寄せ 序でに目頭も熱くさせるから
何もかも嘘であればいいと もう 永いこと瞼を閉じる事にした あぁ・・・
漏れた嘆声を最後に 腰を下ろして静かに横になる死生有命
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