「詩集 永劫」(2008~2017)
舞原 帝
1.期待と 望みと・・・(4/4)
どれだけの時間を使おうとも 元には戻らないものがあって
それをどうにか取り戻せないかと――
例えば 今から君の下へ行き 今までの事を謝れば
それで 君との今までを無かった事にして
どうにか 君は これからの事を笑って許してくれないだろうか
期待がこれくらいだとすると きっと 望みは 無理に笑って許す君の口から
「いいよ」って言葉が出れば良い方だろう
でも 本当に取り戻したいものは きっと 君からの信頼
「いいよ」って言葉に耳をすませてみれば 君が僕に失望している事が分かり切ってて
胸の奥が冷えていく感じがしてならないんだ
それに 君からの視線が冷たくて でも 僕も笑いたいから
――君が僕を見ていないよりはいい って思う事にした 格好悪い事だって気付いてる
君が僕を見ていても 本当は全然笑えないんだけど 君がウソでも笑っててくれたら
きっと 心から笑えると思うんだ
この事を君に話したら 君はもっと僕を許しはしないだろう
現状が悪化するとしたら 君の口から「いいよ」って言葉が出ないまま
その上 君の目が僕を捕らえる事は無くなって
――僕は本当に全然笑えないまま・・・
取り戻せなくなったのは 僕のプライドが君によって創られてしまったから
どれだけの時間を使おうとも 元には戻らない
ちゃんと分かっているつもりだから 僕は今までの事謝ろうとはしない
君の下へ行く勇気はもちろん無いし 今までの事無ければいいと思うけど
創られたプライドがどうしても許してくれない 君とは違って凛として僕を見てくる
君が許してくれないだろうに 君が創ったプライドすら「許さない」と言う
取り戻そうにも 時間が足りない プライドなんて本当に要らないものなのに
君がいなかった事になるなんて嫌だけど 君が創ったプライドは無ければいい
一体どれだけの時間があれば 君の下へ行く勇気が出るのだろうか
それから もし 君の下へ辿り着けたとして 謝る勇気は――
今から欠片でも集めようと思う
君の前に立ったら 「謝る気なんて欠片もない」なんて言ってしまいそうで
君が もう ウソも吐けないほど笑うことから懸け離れていたら
もしかすると 僕が笑うことだって 無くなってしまうんじゃないだろうか
もし 君が創ったプライドが 僕を生かしているのだとしたら
君にずっといてほしいと思うのと同じく プライドに感謝の一つでもしなくてはならないのだろう
一度「許さない」と言われたけど 時間を掛ければいつか許してくれるかもしれない
時間を掛ければ 君の口から「いいよ」って僕を許してくれる言葉 聞けるといい
君のために買った指輪 長い間机の上に置かれてる
僕のプライドも机の上 指輪に詰まった君が創ったプライド 僕の内には無いんだ
取り戻したいものは 指輪を買った時の勇気もそうだけど
君の傍にずっといても良かった時の 時間 空間 目に映った世界の色 それは綺麗で
今みたいに灰色ではなく 自分自身に失望するとは思いもしなかった
そして まだ 君が僕を見る時の目に失望の色が無かった頃 君と僕は「ずっと一緒にいよう」って
どうせ守れもしない約束を交わした
「約束なんて守るのが当たり前」とか二人が勘違いしていれば良かったのかもしれない
時間はもう経ち過ぎてる 君が出て行く後ろ姿 忘れもしない
淋しさを背負ってたのを覚えてる
たぶんだけど もう一度「ずっと一緒にいよう」って言ってほしかったのだと思う
それを守れるか守れないかなんて きっと関係なくて きっと今が大事だった
僕を生かしているかもしれないプライドを捨てていれば――
良かったとは思えない
時間 空間 目に映った世界の色・・・ 取り戻したいけど
どうせなら君も一緒に「戻って来て」と呟く勇気すら いつの間にか何処かに行ってしまった
全てを恐がって 近寄らず 臆病な僕に 君がもし掛けてくれるとしても そんな言葉
僕の内には届かないんだ 全ての感情が壁となって
もし 君が「いいよ」って言葉を掛けてくれるはずなら 僕は全ての感情をなくしたいと思う
君の事を想う気持ちも きっと 捨ててもいいと思えるんだ
だって きっとまた 君の事想えると思うから 一度も面と向かって言ったことないけど
「好きだ」って初めて会った時の気持ち 今度は言える気がするよ
時間は取り戻した やっと 君が創ったプライドは許してくれたんだ
その後 すぐにプライドは消えてしまったけど 僕は生きている
結局 僕を生かしていたものが何だったのかは 分からずじまい
僕の足は動き出した 全ての感情を捨てたから 君の下へ行く勇気が出たのか
君の事を思う気持ちが強くなったから 壁の前に立ちはだかる勇気が出たのか
――嗚呼 きっと・・・ 君の笑顔が見たくなったんだ
だから 僕は 君のために買った指輪を握り締めて 淋しさを背負ってた君の後ろ姿を思い出した
指輪を握り締めた拳で きっと淋しさを殴り飛ばしてやるって 心に誓った
机の上にぐしゃぐしゃになった紙がいくつもあるだろう
そこに一枚だけ綺麗に折り畳まれた紙がある
それには「ごめん」って一言書いてて いろいろ考えてみたけどそれが一番いい気がした
君に会って「ごめん」って言うことができたとしても 君の目を見ちゃいないだろうな
時間が経ち過ぎてるから 「ごめん」って言葉が出れば良い方で
ついでに 君からの信頼も取り戻すことができれば もっといい
期待も 望みも 君に会う時までの支えだから 会ったそれからは 僕一人でどうにかするよ
君を泣かせたのは 君の顔から笑顔を消し去ったのは この僕なのだから・・・
時間が経てば 僕が君に言ったこと無かった事になると思ってた
僕はすぐに忘れてしまったけど 君はこうして時間が経つ今でも 忘れはしないのだろう
時間が経ったお陰で 君の下へ行く勇気が出た
時間が経ったお陰で 謝る時の言葉考える事ができた
でも その言葉を「ごめん」って一言を 君の前で 目を見る見ないは別として 言えるかどうかは
実際に 君の前に立ってみないと分からない
「謝る勇気なんて欠片もない」なんて言ってしまうことがあれば
それは 君が創ったプライドが言わせてるな
その時は また仕切り直し チャンスなんて何度もあると思ってるから
プライドでも何でも 君を見る僕の前に立ちはだかったものなら
この手が指輪を離してしまうまで 何度も相手になってやる
さぁ 期待も 望みも 皆 手を離した今 君の前に立った僕の手に指輪は握られていない
僕は 君の手から 指輪を握ってた手を離した
君の指にはめられたもの それは 僕が創ったプライド
机の上に折り畳まれた紙を 心の中で開くと 「謝る気なんて欠片もない」って書いてある
あぁ きっと 君が創ったプライドが言わせようとしてるんだ
だけど 僕は僕の言いたい事を言うよ 指輪は握られていないけど もう一度握り直して
君を見る僕の前に立ちはだかった君が創ったプライド 殴り飛ばした
どれだけの時間を使おうとも 元には戻らないものがある
だから 今までの事謝っても これからの事を君が許してくれる事は無い
いや 「ごめん」って言った後だから 分かる
「時間が経ちすぎていたのだ」とは言わない 元々時間は取り戻せないものだから・・・
君の傍にずっといても良かった時とは違って 今は もう 君の前から姿を消さなくてはならない
最後に「いいよ」って許してくれなくても 失望してても それが僕の胸の奥を冷やしても
君の声を聞ければ 僕は きっと 笑えると思うから 「ごめん」って言葉を繰り返す
君に「ごめん」って言った後 もし 顔を上げていたら 君のウソの無い笑顔を見れただろうか
顔を上げて 君の笑顔に そして 君の目に失望の色が無ければいいと 期待し 望むけど
僕の目が涙でいっぱいだから 何も分かりはしないまま
僕は 君の口から「いいよ」って言葉を 聞いた気がする
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます