10.ブラックホール
全てを飲み込んでしまうという それは ブラックホールというやつなんだろうな
じゃあ 僕を社会へと飲み込んだ それを ブラックホールと呼ぶべきか
子供のままじゃ飲み込まれたって 吐き出されちまう そんな社会も
ブラックホールと言うべきか 否か 僕の考えを聞いてくれる社会が
存在するのなら 僕が居なくても 居ないから成功する社会の一部も在るだろうから
僕は悲しみに暮れている場合じゃないんだろうな こんな 物事を大袈裟に考える僕が
地球に愛され重力に従って歩いているこの道は
僕を無意識のうちに引き込んだのだから もしかしたら 俗に言う
ブラックホールというやつかもしれない
全てを飲み込んでしまうという それを ブラックホールと呼ぶことにした僕を
飲み込んでしまった社会に 愛想を尽かした僕の足元に黒い点を確認
「ちょっと、すみません」 一人の若者を捉まえて 俺の足元のそれが何なのか
聞いてみる事にすると思っただけの自分を 僕はいつしか信じられなくなっていた
自分の事を「俺」と言う僕が そいつに「僕」と言う人格を飲み込まれてしまうのも
時間の問題だろうなと 「俺」に相談してみた
「ちょっと、待ってくれ」 一人の人格を飲み込んでしまった そのうち
「ブラックホール」と呼ばれることになる「俺」は 無意識のうちに胸に手を当てていた
「ブラックホール」を飲み込んで塵にする事が可能である 宇宙の何処かに在る
ブラックホールは 社会に生きる一人の人格を飲み込むことは出来ない
一人の人格が宇宙の何処かでブラックホールを見つけ入ろうと思わない限り飲み込むことは出来ない
「ブラックホール」を飲み込んで塵にする事が可能である事に変わりは無いが やはり
結局「ブラックホール」と呼ばれるようになった「俺」は
無意識のうちに胸に手を当てていたワケを
足元に在るだんだんと点じゃなくなって来たと思われる黒い何かは何なのかという疑問と共に
考えているうちに やはり 無意識のうちに胸に手を当てていた
全てを飲み込んでしまうという それが 世間一般にブラックホールと言われているのなら
もしかしたら 僕が今居る此処はその中なのかもしれない
可愛そうなことに 「僕」という人格を塵にする事が可能だと自慢するブラックホールは
「僕」を黒くする事ぐらいしか出来なかったが 実に丁度いい
もう「ブラックホール」と呼ばれることに慣れている「俺」を 始終観察することが出来るのだから
きっと ブラックホールと言うべきか 否か 迷っていた社会は
もう十分なほどに ブラックホールに成り得ていたのだろう 自分を使って検証した結果だ
「俺」を馬鹿馬鹿しいほどの疑問のループに引き込んだ社会に
飲み込まれ塵にするには不可能な子供のままで居たかったと 後悔しても
いつかは 無意識のうちにブラックホールに飲み込まれてしまうのだから
後悔しても意味は無いと解っている「僕」は
無意識のうちに黒い点になっていて それを「僕」だと気付かず
眺めていた「俺」はいつから殺されると解っていた社会で生きるようになったのだろうな
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