7.最初と最後

「この世の最後に 君を見て居なくなってもいいだろうか」って

この世の最後に 君に聞いた所為で

この世の最後 君を見ることができなかった

いつからか「最後」に拘るようになってしまったから

いつだって可能だった事も 不可能になった

でも やっぱり「最後」は大事だって思う僕は どうしても君の最後を見れない

顔を上げたそこには 最後の光しか僕の目には映らないだろう

その光を どうして最初の光だと思えないのか 解らない

闇を超えた世界に 何を期待しているのかも解らないけど

一つだけあるとすれば 闇の中に君の命の灯火が揺らいでいるのを

今すぐにでも目にする事を この期に及んで待っているのかもしれない

君が居た頃の思い出がフラッシュバックしても 君を見たことにはならないし

君が居た証拠になるかどうかも 定かではない

もしかすると 僕が居なくなったのかもしれないとは どうしても思えないんだ

だって もし そうだったら 君が居た事を知る奴が一人も居ない事になってしまう

同時に 僕が居た事を知る人も一人も居ない事になってしまうだろう


光に届いた世界には まだ 何も期待なんかできやしない

闇が光に超越できると信じている奴が居たら そいつはもう

何か期待しているのかもしれない その期を待っているのかもしれない


君の最後を見れずに 僕の最後が訪れた いつか

『この世の最後』と呼んだけど それは僕の最後

僕にとっては それだけ大袈裟な事に思えたんだ

最後の望みだから 別に大袈裟な事が叶って欲しかった訳ではない

自分で叶えられる程度のそれを叶えられず 僕は最後を迎えた

やはり 最初だとは思えない なぜって 最初の望みを覚えていないから

きっと 最初の望みに君は居ないだろうから


どうしてだろう 僕にはその光が君の命の灯火には見えない

その最初で最後一度だけ光った光を 今まさに 忘れようとしている

何を期待していたのか覚えているだろうか たぶん それすらも忘れかけ

死に物狂いで 「最後」から逃げようとしているのだろう

間違った「最後」だと

僕には訪れる筈の無い「最後」だと 言い訳を何とか創り損ねた僕は

だから 君を独りきりにして 一人きりになってしまったのだ

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