5.「忘却」
うまく行けば笑うけど 笑い方を忘れた後は 失敗を恐れずにはいられなくなった
注意してても 細かい間違いをしてしまう
もちろん それが失敗だと思ってしまったら この先 笑うことなく時が経ち続けるだろう
失敗した事は 絶対に成功にはできないから
笑いたければ まず 成功もしなければいい
きっと 成功の先には失敗しか待っていない・・・
すでに何かに失敗している時 当たり前のようにそれを覚えていて
だから もう笑えないかもしれない
この先 確実に成功が待っているとしても
その成功を喜んでいるすぐ後に 失敗を思い出すかもしれない
それが 注意してても起こる細かい間違いだと
たぶん 気付いていない
その筈なのに さらにその先 やはり成功が待っているとしても
その成功を喜んでいるすぐ後に なぜか 「何か失敗した」と思ってしまう
どうしても 成功の先には失敗しか待っていないらしい・・・
もう 笑い方を忘れた後は 誰かの笑い顔見ても 誰かの笑い声聴いても
それを それだと分からず 確実に見落としてしまうだろう
――もう笑えない もう見えない もう聴こえない
ずっと待ち望んでいた事は すぐに気付くもので そして
きっと 笑えるものだ 失うことを望んでいたわけじゃない
待ち望んでいた事は 喜びを忘れる事だった
成功には喜びが付き物だから その後の失敗の哀しさが
確実に成功を呼んでしまう そうしたら その成功が――
終わりのない繰り返しから抜け出したくて 本当は笑いたかったけど
うまく行っても 笑えなくなってしまった今だからこそ 喜びを忘れたかった
もう 「何か失敗した」と思わないように
この先 きっと失敗を恐れずに時の中を過ごして行きたいから
誰かの笑い顔を見ないように 目を瞑った
すると あの成功も失敗も見えなくなって 笑い方を忘れたことも忘れてしまった
誰かの笑い声も 同時に ただの声としてしか聴こえなくなった
もう 確実に成功を呼んでしまう事はない そして 失敗する事も無くなった上
心に鍵を掛けてしまったから 恐れるものは何も無くなったすぐ後 気付いた
――失うことを望んでいたわけじゃない でも ずっと先ほど 多くを失い過ぎたんだ
これがあの失敗だとすると 次の成功はいつ訪れるだろうか なんて期待するのは
本当は まだ笑えるかもしれないと思っている証拠 ずっと 願い続けていた証拠
何一つ叶わないまま 時が過ぎて行く
誰もが笑っている中で 誰かが誰かを呼ぶ声がした
注意してても気付く筈の無い声は 一体誰を呼んでいたのだろう
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