22.塔
線から食み出した一匹のアリが主義を唱えた
永遠演説みたく声が枯れるまで喋ると席に着いたアリ
裁判官はその男を有罪にした
「一人だけ違う行動をしては困る」と判決が下された男
裁たれた布は枚数を重ね
塵も積もれば山となった山頂で
アリは男の高さにまで達した線
下っているのか上っているのか
印を付けた所に辿り着く
朝が遣って来ても夜が暗くても
高い線の様なあの塔は見えている
列をなして死刑台へと向かう
線の様な列から食み出した男
踏み出した足は一匹のアリを踏み付け
もう片方の足で線を踏み越えた塔
建設会社はあの塔を壊す事にした
「あれは存在してはならない」
誰もが無言で男とアリの一生を音を立てて崩していった鉄
子どもたちは世界の真ん中で積み木遊びをし終えたらしい
いつか裁判所で無実を訴える羽目になるだろう大人たち
一人と一匹の葬式はしめやかに執り行われた
形も無いのに火は焚かれ放り込まれたのは名前と言う魂で
あの空かこの空か何処かの空に見えているあの塔の様な煙
雲を抜けた先で遮るものの無い線と出会ったそうな
一人の男と一匹のアリが朝と夜の境目に永遠線を引いている
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