9.塔

線から食み出した一匹のアリが主義を唱えた

永遠演説みたく声が枯れるまで喋ると席に着いたアリ


裁判官はその男を有罪にした

「一人だけ違う行動をしては困る」と判決が下された男


裁たれた布は枚数を重ね

塵も積もれば山となった山頂で

アリは男の高さにまで達した線


下っているのか上っているのか

印を付けた所に辿り着く


朝が遣って来ても夜が暗くても

高い線の様なあの塔は見えている

 

列をなして死刑台へと向かう

線の様な列から食み出した男

踏み出した足は一匹のアリを踏み付け

もう片方の足で線を踏み越えた塔


建設会社はあの塔を壊す事にした

「あれは存在してはならない」

誰もが無言で男とアリの一生を音を立てて崩していった鉄


子どもたちは世界の真ん中で積み木遊びをし終えたらしい

いつか裁判所で無実を訴える羽目になるだろう大人たち


一人と一匹の葬式はしめやかに執り行われた

形も無いのに火は焚かれ放り込まれたのは名前と言う魂で

あの空かこの空か何処かの空に見えているあの塔の様な煙

雲を抜けた先で遮るものの無い線と出会ったそうな


一人の男と一匹のアリが朝と夜の境目に永遠線を引いている

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