第4話
「そんな事実はないんやから堂々としとりゃええ。仮にそうでも別に法律に違反しとるわけやなし」
「でも外聞が悪いわい。これで失敗でもしたら余計※めんどしかろう?」
「いやいやあんた、逆の立場でも考えてみんと」
「どういう意味?」
「あの娘の立場んなってみたら、ゆうこと。みんながあんたみたいに考えたらあの娘、どこのおたすけし隊でも採用されんで」
「ああ、そうか……」
「まあ、なんとのう気にいった、いうこともあらい。そこはあんまり深う考えんでええやろう」
「あんたさっきからそんなんばっかりゆうて」
「わしらは不正は一切しとらんし、機会は平等や。わしらは武音さんが斧馬を選んだ、ゆうチャンスを生かす方向に考えたほうがええ」
「チャンスんなりゃええが……」
「まあまあ、前向きに前向きにな」
「そういや、武音さんはなんかのイベントで来た時に斧馬が好きんなった、みたいなことゆうとったが、どんなイベントぞな? わし覚えないんやけど」
「そらあんた、興味がないからで。そういうんは若いもんが行くようなもんやろ」
「いや、でも一応市政に携わる立場やけん……」
「……今スマホで調べてみたんやけど、多分あれ斧馬見のことやで」
「えっ? 隣の隣やないか」
「まあ、〝この近くに来た時〟とはいうとった」
「近く言や近くやけど……」
「……」
「……」
「……」
「……まぁ、こっちにも遊びかなんかで来たんかもしれんな」
「この辺遊ぶようなとこないけど……」
「自然があるやないか自然が! ジオパーク!」
「歴史もある。古代ロマンも……」
「まぁまぁ……。しかし、そう言うたらもう一方のほうのおたすけし隊の娘もなんで斧馬に来たんかはようわからんで」
「あれ? あんたも知らんの?」
「あのなんか暗い娘か? そういや面接もしとらんし、ようわからんよな」
「この前いきなり〝挨拶に来た〟って市役所に来た時にはびっくりしたな」
「市長に聞いてみんと」
「市長も知らん言いよるで」
「なんやそれ」
「こないだのカラオケん時に聞いてみたんやけど、わしもようわからんゆうて」
「わからんですむかい。なんのための市長ぞゆう話よ」
「あれ、なんかようわからんところからねじこまれた、みたいな話やなかった? 俺はそう聞いたんやけど」
「あの娘こそ市長のコネや思うとったが。違うんか」
「わしは知らん。まあどっちみちようわからんのやろ? そもそも市長も知らんのやから……」
「まあええわい。わからんならわからんでひとまず置いとこうや」
「ほうやな。良さそうな人が一人来てくれた、ゆうだけでもええとしよ」
「うん。やるだけやりました、ゆう風にはせんようにせんとな」
長い歓談が終わり、ようやく面接官たちは席を立った。
「……まあ、こがいなもんはなるようにしかならんわい」
※恥ずかしいの意
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