第3話
「……どう思うかな? あれ」
待ちかねたように、面接官の一人が誰ともなく訊ねる。〝ほうよなあ〟〝どうじゃろ〟と、皆一斉に口を開いた。早く仲間内で話したくてしょうがなかったようだ。
「まあ、元々そこそこ知名度があるアイドルなんやろう? 本来ならよう来てくれた、ゆうようなもんよな」
「それ絡みで取材なりなんなり来るかもしれんしな。そん時に斧馬のことにもちょこっとでも触れてもろうたら、それだけでも価値があらい」
「でもあの娘、アイドルの時にたびたび暴力事件起こしとるゆう話やけんなあ……」
「そこよ」
「それ気んならいな。具体的にどんな塩梅なんやろ?」
「面接で聞きゃあよかったのに」
「本人目の前にしたらどうもな……」
「後からなら何でも言えらい。あんたが聞いてもよかったんやけん」
「ネットではどがいぞ?」
「うーん……今スマホで検索しよったんやけど……具体的なことはどこにも書いてないんよなあ……ニュースっちゅうか記事みたいな形ではないわい。掲示板とかツイッターみたいなんで噂や憶測がちょこちょこ出てくるぐらいで」
「前に見た時もそんな感じやったもんな」
「ネットいうのはそういうもんよ」
「まあアイドルいうんも競争の激しい世界やろうしなあ。そんぐらいのことは日常茶飯事なんかもしれんな」
「大袈裟に伝わってしもうとるゆうんもありがちな話よ」
「だいたいその、暴力事件いう話は誰が言い出したん?」
「ほら、あの山名のとこの娘よ。今度応募してきたんが元アイドルらしいゆうんで、あの娘に聞いてみよ、いう話んなって……」
「ああ、そうか。あの娘がえらいアイドル好きやゆう話で」
「そうそう。知っとるんやないか、ゆう話んなったんよな」
「あんとき凄かったで。普段からは想像もできん勢いであの娘、喋りまくったけんな」
「
「おお! ほんとや!」
「あん娘もようやく天職を見つけた、ゆうことんなるかもな。ハハハ……」
「あんたそれは言い過ぎで」
「いやいや悪気はないんよ。小さい頃からよう知っとる娘やし、氏素性もしっかりしとる娘やけんな」
「……まあ、もう決まりでええんやない? なんか色々ハマっとる気もするやないか」
「ほうやな。ご縁があった、ゆうことで」
「やけどなあ……わしはどうもひっかかるんよなあ……」
「なにがな?」
「なんで斧馬を選んだんかはっきりせん、いうとこよ」
「どうでもええいうたら、どうでもええことないか?」
「しかしなあ……元アイドルがおたすけし隊に! いうたら、そりゃ注目度は上がるやろうけど……言うたらなんやけど客寄せパンダみたいなとこあるやんか」
「別にそれはそれでええんやない?」
「パンダはパンダでたくましゅう生きとるんや、それの何が悪い、ゆう話よ」
「いや、やからよ。いざ注目された、ゆう時にあの娘がなんで斧馬を選んだんかはっきり説明できんかったら……」
「ああ、あんたの言いたいことわかった。わしらが裏でこちょこちょやって来てもろうた、って疑われんか、いうことやな?」
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