第八話 読書サークルへの道

大学生活が少しずつ慣れてきたある日、蓮はサークル活動について真剣に考えていた。友達であるここみに勧められてもいたが、自分でも何かに打ち込むものが欲しいと感じていた。サークル活動を通じて九条さんとも距離を縮めるチャンスかもしれないと、心の中で期待が膨らんでいた。


その日の夜、蓮は大学のシラバスをじっくりと眺めていた。多種多様なサークルの中で、どれが自分に合っているのか、どれが自分を成長させてくれるのかを考えながらページをめくっていく。そして、ふと目に留まったのが「読書サークル」という名前だった。


「読書サークル…」


蓮はその名前に強く惹かれた。九条さんがいつも読書をしている姿が頭に浮かんだからだ。彼女との共通の話題を持つことで、もっと自然に話ができるようになるかもしれないと考えた。九条さんとの距離を縮める一歩として、このサークルは最適だと感じた。


翌日、蓮は早速、読書サークルについて調べてみた。しかし、思いもよらない事実に直面することになる。なんと、そのサークルのメンバーは九条さん一人だけだったのだ。蓮はその情報に驚き、「どうして一人なのか?」という疑問が頭をよぎった。


翌日、蓮は九条さんを見かけると、意を決して声をかけた。


「九条さん、ちょっと話があるんだけど…」

蓮は少し緊張しながらも、真剣な表情で話しかけた。


九条さんは蓮の姿を見て、少し驚いたような表情を浮かべたが、すぐに優しい笑顔に変わった。「どうしたの、星野くん?何か困ったことでもあるの?」


「実は、読書サークルについて聞きたいことがあって。九条さんが一人でやってるって聞いたんだけど、どうしてなんだろうって…」

蓮は言葉を選びながら、直接的に尋ねた。


九条さんは一瞬目を伏せ、少し考えるように沈黙した。その後、静かに口を開いた。「星野くん、実はね…」


九条さんは、過去に何度かサークルメンバーを募集したものの、彼女の美しさを理由に不埒な目的で近づいてくる男性たちが多かったことを語った。彼らは純粋に読書を楽しむことを求めていなかったため、九条さんは彼らを断り続けてきたのだ。その結果、誰もメンバーに加わらず、彼女一人でサークルを続けることになってしまったという。


「私、本当はただ一緒に読書を楽しむ仲間が欲しかったの。でも、そんな気持ちを理解してくれる人に出会えなかったの。」

九条さんはそう語り、少し寂しそうな表情を浮かべた。


蓮はその話を聞いて、九条さんの心の中にある孤独を感じ取った。そして、決意を固めた。「九条さん…俺、読書サークルに入りたい。本を通じて、もっといろんなことを学びたいし、九条さんと一緒に活動できたら嬉しいと思うんだ。」


九条さんは蓮の真剣な眼差しを見つめ、しばらく考え込んだ。そして、ふと柔らかい笑顔を見せ、「本当に?星野くんが入ってくれるなら、私は大歓迎よ。でも…」と続けた。


「でも?」

蓮は心配そうに尋ねた。


「でも、私の信念を理解してくれる人でなければ、サークルに入れることはできないの。星野くんがどんな人か、少し時間をかけて確かめさせてほしいの。」

九条さんの目は真剣だった。


蓮はその言葉に一瞬たじろいだが、すぐに頷いた。「もちろんだよ。俺は九条さんの信念を尊重するし、俺自身も読書を通じて成長したいと思ってる。だから、これからもよろしくお願いします。」


九条さんは蓮の誠実な答えに安心したように微笑み、「ありがとう、星野くん。これから一緒に、素敵な読書サークルを作っていきましょう」と静かに言った。


蓮は九条さんの言葉に胸が熱くなり、心の中で「このサークルに入って良かった」と強く思った。そして、九条さんとの絆を深めるために、これからどんな本を読もうかと楽しみに思いを馳せるのだった。

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