第七話 経験値を積むために

蓮は、これまでの失敗にもめげずに、コミュニケーション力を鍛えるために再び挑戦することに決めた。九条さんともっと円滑に話せるようになるためには、まず他の女の子と話す練習をする必要があると感じたのだ。


その日、大学のカフェテリアで一人静かに本を読んでいる女の子が目に入った。彼女は周りの喧騒を全く気にせず、穏やかにページをめくっていた。蓮は「この子なら落ち着いて話せるかもしれない」と思い、勇気を振り絞って話しかけることにした。


「こんにちは。隣、いいかな?」

蓮は少し緊張しながら声をかけた。


女の子は顔を上げて蓮を見た瞬間、心の中で(何このイケメン...)と思った。しかし、驚きつつもすぐに明るい笑顔を見せ、「どうぞ!」と答えた。


蓮はその笑顔に安心し、少しずつ会話を始める。「読書が好きなんだね。その本、面白い?」


「うん、この作家の作品が大好きなの。世界観が本当に素敵で、つい引き込まれちゃうんだよね。」

彼女は本を蓮に見せながら、嬉しそうに話した。


「そうなんだ、なんかすごく楽しそうに読んでるのが伝わってくるよ。俺、星野蓮っていうんだ。君は?」

蓮は話しながら、自然と自己紹介を挟んだ。


「私は有馬ここみ。よろしくね、星野くん!」

ここみは笑顔で返事をし、蓮と向かい合った。


「ところで、ここみさんは何かサークルに入ってるの?」

蓮はここみとの会話を自然に続けるために、興味を持って質問を投げかけた。


「文芸サークルに入ってるよ。作家志望の友達がいて、彼女と一緒に活動してるんだけど、すごく楽しいよ。星野くんは何かサークルに入ってる?」


蓮は少し恥ずかしそうに首を振った。「いや、まだ入ってないんだ。何か興味のあるサークルを見つけようと思ってるんだけど、まだ決めかねてて。」


ここみは蓮の答えに少し驚いた。「そうなんだ!でも、きっと蓮くんに合うサークルが見つかるよ。大学生活はこれからだし、いろいろ挑戦してみるといいと思うよ!」


蓮はここみの前向きな姿勢に励まされ、少しずつ会話が弾んでいくのを感じた。「そうだね、ここみさんのアドバイス、ありがたいな。」


ここみはにっこり笑って、「そんなことないよ。蓮くんとこうして話せるなんて、私も嬉しいし、もっといろんな話をしたいな。」


蓮はここみの明るさに心を打たれ、自然と口が開いた。「あのさ…俺、友達が少ないんだけど、ここみさんと友達になりたいなって思ってる。よかったら、俺と友達になってくれない?」


ここみは蓮の申し出に目を輝かせ、心の中で(よし!)と小さくガッツポーズをしながら、「もちろん!友達になろうよ!」と明るく答えた。


蓮は彼女の答えに安堵し、「ありがとう、ここみさん。これからもよろしくね。」と微笑んだ。


ここみは蓮の笑顔に再びドキッとしながらも、友達としての関係を築くことに喜びを感じていた。「こちらこそ、よろしくね!」

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