第四話 気になるけど別に好きじゃない
ある日、蓮はいつものように大学のカフェで友人の健と一緒に過ごしていた。健は蓮の数少ない親友の一人で、彼はいつも蓮に対して率直なアドバイスをくれる存在だった。
「で、最近どうよ?相変わらず図書館通いしてるみたいだけど。」
健がコーヒーを一口飲みながら、何気なく尋ねた。蓮は少し考え込みながら、ゆっくりと答えた。
「まあ、いつも通りかな。ちょっと勉強に集中したくてさ。」
「ふーん。でも、なんか様子が違うな。何かあったのか?」
健は鋭い視線を蓮に向けた。蓮は思わず目を逸らしながら、肩をすくめた。
「別に、何もないよ。ただ…最近、ちょっと気になる子がいて。」
「おっ、やっと来たか!で、どんな子?」
健の目が輝いた。彼は蓮がこれまで恋愛に関して無関心だったことを知っているので、珍しく蓮が誰かを気にしていることに興味津々だった。
蓮は少し頬を赤らめながらも、落ち着いた口調で答えた。「図書館でよく会う子なんだけど、クールで清楚な感じなんだよな。でも、別に特別な感情はないし…ただ、ちょっと気になるだけで。」
「おいおい、特別な感情がないのに気になるってどういうことだよ?」
健はにやりと笑いながら蓮をからかった。蓮は慌てて否定する。
「だから、別に好きとかそういうのじゃないんだって。ただ…なんか、ちょっと気になるってだけでさ。」
健は蓮の言葉を聞きながら、真剣な表情に変わった。「なるほどな。でもさ、蓮、お前っていつも無意識に周りのことを気にしすぎるんだよ。もっと自分の気持ちに正直になったほうがいいんじゃないか?」
「正直って言っても、まだそんなに深く知ってるわけじゃないし…。別に好きとかそういうのじゃないから。」
蓮は少し頑なに言い返したが、その顔には少しだけ迷いが見えた。
「それがツンデレってやつか?」
健は冗談混じりに言ったが、蓮はその言葉に少しムッとした表情を浮かべた。
「ツンデレじゃないって言ってるだろう。」
健は蓮の反応に笑いを堪えながら、続けた。「でもさ、もしその子が他の誰かと付き合うってなったら、お前どうする?気にならないのか?」
蓮はその問いに一瞬言葉を失った。自分が九条さんと付き合うことを想像するのは、まだ早すぎると思っていた。しかし、他の誰かが彼女を手に入れることを考えると、胸の中がザワザワと騒がしくなるのを感じた。
「それは…なんか嫌かもな。でも、別に俺がどうこうする話じゃないし。」
蓮は小声で呟いた。
「ほらな、それがもうすでに感情が動いてるってことなんだよ。」
健はニヤリとしながら、蓮に目を向けた。「蓮、そろそろ認めてもいいんじゃないか?少なくとも、興味があるんだろう?」
蓮はその言葉に少し戸惑いながらも、渋々と認める。「興味がある…かもしれない。でも、まだ好きとかそういうのじゃないって言ってるだろ。」
「まあまあ、焦らなくていいよ。でも、もし本当に気になるなら、もっとアプローチしてみたらどうだ?まずは、もっと彼女のことを知るために、一緒に過ごす時間を増やしてみるとかさ。」
健の言葉は、蓮の心に響いた。確かに、九条さんともっと話してみたいし、彼女のことをもっと知りたいという気持ちが強くなっていることを感じていた。しかし、それを素直に認めるのは、まだ少し抵抗があった。
「まあ…考えておくよ。でも、別に急ぐつもりはないし、ただの友達って感じでいいんだ。」
蓮は最後にそう言って、話を終わらせようとしたが、健は笑いながら肩を叩いた。「わかったよ、ツンデレ蓮くん。でも、いつか自分の気持ちに素直になれよ。」
蓮は少し恥ずかしそうに微笑みながら、「うるさいな」と言って健を軽く突いた。二人はその後も他愛のない話をしながら、カフェでの時間を過ごした。蓮の心には、健のアドバイスが少しずつ染み込んでいくのを感じていた。
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