第7話
お風呂から上がった真希は、澪に発生する
「…なるほど?特例を使えば良いんだね」
調べたのは探索者に関わる法令全般。
探索者と言えばお分かりの通り、イベント会場はダンジョンである。
今世では小学4年生の真希は規定年齢を満たしていない為、ダンジョンへの個人的な入場は原則禁止されている。
…が。
レベル10を超えると『知能や思考能力等が同年齢の子供の2〜3倍ほど向上する』という研究結果が発表されるや否や、日本政府は特例として子供でもダンジョンへ入場できる様に法整備を行なった。
ダンジョン管理及び探索者法によると、
※条文は読み飛ばしても物語に支障はございません。
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第五章 未成年者のダンジョン入場に関する規定
第23条 未成年者の入場制限
1. 18歳未満の未成年者は、ダンジョンへの入場を原則として禁止する。ただし、以下に定める条件を満たす場合に限り、例外的に入場が許可されるものとする。
1.1. 探索者協会による事前審査を通過した場合。
1.2. 認定が正式に登録されていること。
2. 未成年者がダンジョンに入場する際には、保護者または法定代理人の同意が必要であり、その同意書が事前に提出されていなければならない。
3. 10歳未満の者がダンジョンに入場する場合、常に成人した探索者の同伴が必要であり、単独での行動は厳禁とする。
第24条 特例事項:10歳未満の入場許可
1. 10歳未満の未成年者がダンジョンに入場することは、原則として禁止される。ただし、以下の特例事項に該当する場合、探索者協会の許可により入場が認められる。
1.1. 探索者協会によってその才能や潜在能力が特に認められた者であること。
1.2. ダンジョン内での行動に必要な能力(戦闘技術、知識、魔法能力など)を保有し、それが証明されていること。
1.3. 事前に実施された協会による試験および評価において、高い安全性が確認された者であること。
2. 10歳未満の者がダンジョンに入場する際には、探索者協会が指定するガーディアン(保護者や監督者)の同行が必要とされる。ただし、特例として単独行動が許可される場合、以下の条件が満たされなければならない。
2.1. 探索者協会による継続的なモニタリングと監視が行われること。
2.2. ダンジョン内部での行動中、常時通信機器および監視カメラを装備し、リアルタイムで監視が可能であること。
3. 協会が許可を取り消す場合、10歳未満の未成年者はただちにダンジョンから退場させられ、再入場は許可されない。
第25条 責任の所在
1. 未成年者がダンジョン内で発生したいかなる事故や事件については、保護者または法定代理人が第一義的に責任を負うものとする。
2. 探索者協会は、未成年者の安全確保に努め、必要な支援を行う義務を有するが、法に基づく制限内での責任範囲に留まるものとする。
etc…
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今回、重要なのは【 第23条、第24条 特例事項:10歳未満の入場許可】。これが適用されない限り私はダンジョンへの入場は許可されないってところ。
これを通過する為に真希は…探索者協会の内部に目を向けた。
秘密裏に汚職を働く特例許可が出せる幹部級の情報を、探索系スキルを駆使して入手。それを元に脅して駒とし、特例許可を発行させようという魂胆である。
「いい人み〜つけたぁ!」
真希にとっては非常に素晴らしい人材を発見した。
その人物は協会全体の管理運営、財務、人事、法務、リスク管理など、協会の中枢機能を統括。協会の方針決定や重要な業務の遂行において欠かせない存在であり、協会内外で絶大な影響力を持つ。
トップの協会長からの厚い信頼を得ており、表向きは協会の模範的な幹部として振る舞っている。
…が。
その地位を利用してダンジョン管理及び探索者法の微妙な隙間を突き、ダンジョン産アイテムの不正取引、売買不可の危険物押収品の海外への横流し、ダンジョン内での私設実行部隊による暗殺等…叩けば出るわ出るわの真っ黒な埃の数々。
表向きは協会の利益と探索者の安全を最優先に考えているように見せかけて、実際には個人的な利益を追求する汚職大好きな糞野郎。
………
彼の巧妙な手腕により、汚職は巧みに隠蔽されているが…真希には一瞬で看破された。
そんな彼の名は、
【ダンジョン管理省傘下 探索者協会所属 総務統括部門 総務統括局長
協会長、副協会長に続く、探索者協会のトップ3である。
全く、素晴らしい人材を発掘したものだと内心で自画自賛した真希は、早速証拠資料の製作に着手した。紙資料は錬金術の応用でパパッと済ませる。
時空間魔法で過去の違法取引の瞬間を切り取り、音声データと共に映像資料としてスマホに保存する。
「それじゃぁ早速、会いに行きますかぁ」(黒笑)
少々の仕込みをした後。渡辺龍一の現在地を特定した真希は、時空間魔法で飛んだ。
*****
時間は22時過ぎ。
渡辺龍一は自宅のリビングでくつろいでいた。照明は柔らかく灯り、静寂が部屋を包んでいる。彼はグラスに注がれた高級なウイスキーを楽しみながら、一日の疲れを癒していた…その時。
突然、空間が歪むような感覚と共に、目の前に人影が現れた。
量産系衣装の真希である。
渡辺は驚愕の余り手離したグラスが、床に落ちて砕け散った。
「こんばんは、渡辺さん」
真希はにこやかに微笑みながら挨拶した。
渡辺はしばらく言葉が出なかったが、流石政治家相手に場数を踏んでいるだけあって「何らかのスキルで忍び込んだのだろう」と察し、表面上は冷静を装いながら問いかけた。
「…一体何のつもりだ。こんな夜遅くに、勝手に人の家に…」
「お願いがありましてね。私に対して特例事項:10歳未満の入場許可を認めてもらいたいんです」
と、淡々と要求を伝えた。
「何を馬鹿なことを。そんな要求に応じるわけがないだろう」
渡辺は驚きを隠しながらも冷笑。即座に拒否した。
まぁそうだよね〜と欧米人宜しく御袈裟なリアクションで手を振りつつ、スマホを取り出し、画面を渡辺の目の前に突きつけた。
「これを見てください。あなたの行動の記録です」
画面には、渡辺がダンジョン産アイテムの不正取引を行っている映像や、危険物を海外に流している瞬間の映像が音声と共に次々と映し出された。ついでに紙資料も取り出して投げつける。こっち各種書類改ざんの資料だ。
おままごとに付き合うか…と、言わんばかりに余裕綽々だった渡辺の顔色が一変した。
真っ青である。
笑える。
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宜しくお願いします。
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