第3話
「ただいま」
結局、雑貨は小学校で使う可愛いペンケースとペン各種を買っただけで、特筆するべきことはないです。
部屋用の小物は買ってない。と言うのも、私が知る自室はゴミ屋敷であり、掃除したら雰囲気が絶対ガラッと変わるので、それに合わせて買った方がいい。若しくは自作しようとの判断です。
さて。
世間的には休日だが両親は仕事であり遅く帰ってくる。なので家には誰もおらず、例外がない限り大抵いつも一人だ。
唯一家族全員が揃うのは明日の、日曜日だけである。
完全週休二日制とか言いつつ一週間に1日しか休みがない。有休が勝手に消費される。求人票と内容が全く違う。騙された。パワハラウザい。上司最悪。などなど、両親は愚痴る。
う〜ん…後でその企業にカチコミかまして
時刻は午後3時。夕食準備まで時間が余っているので、その間に部屋を掃除します。
「相変わらず汚ったないなぁ…」
掃除機が掛けられておらず埃やゴミなどが目立つ床。外から拾ってきたよくわからないガラクタやゴミの戦利品が積み上がる棚に、今は何も飼われていない大きな汚れた虫籠。脱ぎ捨てられて洗濯されていない衣類。一体何日放置したんだと言わんばかりに変色しカビの浮かぶ何らかのペットボトル飲料の数々…などなど。
はっきり言う。人間としてあり得ない。もう地獄だね。こんなんで良く今まで生活できてたよ、私…病気とかなってないよね?
ちょっと気になって回復魔法系列の自己診断したら…oh。
ゴミ屋敷との因果関係は不明だけども———
「———これ腫瘍じゃんけ…」
異常増殖や周辺組織、臓器に対して侵襲的でないことから良性腫瘍と判断できる。このまま放置してたら稀に悪性化することもあるし、治してしまおう。
よく誤解されがちだけど、回復魔法ってレベルの高い技を一発ぶちかますば手足生えて全部治って全回復‼︎…ってのはちょっと間違い。いや、あってるにはあってるんだけど、魔力の無駄遣いがデカすぎると言えば良いかな?
手足の欠損も治るレベルって用は、それだけ魔力を多く込めて出力を上げてるってことに他ならない。(他にも方法はあるけど大体の人はそうしていた。)
じゃぁ手足じゃなくて指一本の場合はどうか?
これも欠損だけど、手足レベルじゃないよね。それなのに手足欠損全回復レベルの回復魔法を掛けるのはどうよ?ってこと。
腫瘍もそう。
現代医学的にみたら不治の病とまではかなくとも、結構な病気である。これは異世界でもそうだった。だから彼方でも高威力の回復魔法を投射して無理やり治していた。
と言うのも、残念ながらステータス表記が悪い所為で…
指の欠損は手足と手足の欠損と同レベル!てことは、この回復レベルでないと治せない!
…みたいな間違いが横行しており、それが当たり前だと錯覚している。
腫瘍単体の切除と周辺組織の回復程度なら、やりようによっては比較的低レベルの魔力消費量で回復できるのに…
「…よし、治ったと」
うん、一瞬だね。
元々違和感があったとか、そう言うタイプじゃ無かったので体調の変化を劇的に感じられたりはしないが、自己診断した限り完治している。
他の病気はない。
あ、因みに。
全身複雑骨折、手足欠損、出血多量、脳損傷、とかが同時に発生した不運すぎる重症の場合は、同時に全部位を一気に治せる、魔力を込めまくった高威力回復魔法に軍配が上がります。
そりゃそうよね、ちまちま一箇所ずつ直すより、一発の方が早く治り、患者の命が助かる可能性が高いもん。
さて、腫瘍も治った事なので、掃除をしよう。
「面倒だから一気に片付けるよ〜」
長年染みついた汚れや埃などは空気と一緒に、生活魔法の浄化を一発ぶちかます事によって…はい、キレイキレイ。
空間把握で何処に何があるかを瞬時に理解すると、不必要と判断したものだけを指定してアイテムボックスに収納。これは後に
凡そ9割のゴミが消えたので、部屋がとても広々とした空間を取り戻した。
後は損傷箇所も再生魔法でほいっとな。
「はい、終わり」
凡そ10秒もせず、掃除(兼修理)が終わった。
う〜ん、楽。
黄色いシミの落ちた真っ白なベッドに座り、必要最低限な物しか置かれていない広々とした部屋を見る。ここが十数秒前まではゴミ屋敷だったとは考えられない清潔感ある部屋だ。
内容物は、ベッド。本が殆どない本棚。ランドセルなど学業関係物一式。すっからかんな押し入れ。
以上。味気ない。
「真っ新だし…もう自作するかぁ」
戦闘もできるけど、メインは生産職な私を舐めるなよぉ〜
ひとまず残していたベッドなどをアイテムボックスに仕舞い、異世界産マホガニーマギトレント木材等を取り出しては錬金術でパパパッと加工。
にすにす。
ヴィクトリアン調のおされなデザインを施した、落ち着いた深みのある色合いの家具達が秒で生産される。
ベッド・寝具、ナイトテーブル、プレジデントディスク&ダイニングチェア、チェスト、本棚、縦長キャビネット、シャンデリア、フロアスタンド、雰囲気合わせの為に壁紙変更。絵画…は、王ーさまから褒美で貰ったやつを適当に数点。ちょっと狭いので空間拡張を少々。
真希は、完成した自室を見渡しながら微笑んだ。
「ふぅん、いい感じじゃない?」
ヴィクトリアン調で統一された豪華な家具が、まるで貴族の邸宅の一室のように整然と並んでいる。ベッドは豪華な彫刻が施されたフレームに、柔らかそうな天蓋付きの寝具が美しく収まっていた。ナイトテーブルやチェストも同じく優雅で、細部にまでこだわり抜かれた彫刻が施されている。
シャンデリアの光が部屋全体を温かく照らし、フロアスタンドの柔らかな光が雰囲気を和らげる。
壁には王から褒美として貰った絵画がいくつか掛けられ、芸術的な一面も演出。
まぁ全部見よう見まねの再現だけどね!
「うん、完璧」
空間を少し拡張したことで、広々とした感覚が保たれ、圧迫感は全くない。豪華な空間に囲まれながら、真希は自分の新たな計画を進める舞台が整ったことに満足げだった。
長らく異世界で生活していた関係上、その世界の都市部(王都)などでありふれていた、ずっと目に入るヴィクトリアン調デザインを見るとやっぱり落ち着く。
それにシンプルな現代の物よりも味があって好みだ。
………これなら服も作れるだろって?
かれこれ百数十年間、適当な男物しか利用した事ない私には無理な注文ですよ。それに異世界といってもアニメの様な世界では有りません。
中世のイギリスやフランスの様なファッションセンス世界ですよ。あの何て言うの?こう…華美と言うか、その、うんまぁその時代を感じる味のあるデザインと言いますか。
【中世イギリス 服】とでも検索してみてください。私の好みでは有りませんでした。
それなら現代ファッションデザイナーの専門家が仕立てた、私に刺さる可愛い既製品を買った方が良い。
「よいしょっと…さて。夜ご飯の準備には3時間くらい時間あるし、ちょっとお昼寝〜」
ステータスを引き継いでいるので、眠らなくても数年起きていられるのだが、気分の問題です。と言うことで、ベッドに横になった。
…あっ。パジャマ買えばよかった。
まぁ、それは明日にしておこう。
おやすみ。
*****
「ただいま〜って、これ誰の靴?真希、まさか女の子連れ込んでるの⁉️」
「なにぃ⁉︎あの真希が女を捕まえてきたって⁉︎」
起きて夜ご飯を作っていると両親が帰宅した。洗脳の準備をする傍ら、ひどい言われように苦笑いするしかない。
女顔が嫌で、どうしても格好良くなりたくて。なんて健気な思いで男子友達としか連んでこなかった(女子友達が居ない訳ではないが…)ので、必然的に家に呼ぶ友達も男だけだった。
あの汚部屋に友達を呼べた前人格には、悪い意味で脱帽ものである()
それは兎も角。
息子の浮いた話を聞いた事がない両親は、それはもうとても驚いている様子である。ドタバタとリビングに向かってきては、どんな女の子を連れ込んだのか嬉々として確認にやってきた。
その瞬間に暗示を発動。
「「あ……」」
目から正気が消えるのを確認すると、早速脳内をいじいじ。精神魔法で深層意識に介入しては過去の記憶などを元に情報改竄。齟齬が出ないよう何度もシミュレートを徹底しつつ、回復魔法で二人の脳の負担を和らげながらじっくりと刻み込む。
時間にして約2秒。
もしもの保険を、不同意でも強制できる契約魔法で何個か掛けつつ、私の生まれから今日までの記憶改竄及び定着に成功した。
う〜ん、壊しちゃダメな人達だから慎重にやったけど、その分素晴らしい出来だ。
さて、それでは目を覚ましてもらおう。
ぱちんっ
と、フィンガースナップ。
両親の正気が戻る。
「おかえり、ぱぱ。まま。夜ご飯の準備はできてるよ」
「…え?あ、あぁ…ありがとう真希。今日も美味しそうだね」
「いつもありがとうね真希ちゃん!」
「私えらいでしょ〜」
「えらいえらい〜」
そう言いながら、ままは私を撫でる。
あ、因みに。前人格の時から両親は真希の事を可愛がっていたと記憶しています。なので、余計にコンプレックスを刺激されて拗れる環境にいたと言う訳ですね。
お陰でプチ反抗期の様な精神構造をしていました。
私が意識を取り戻したので、その様な幼稚な感情はなくなりました。
…が。
代わりに子供扱いされる事に喜びを感じてます(愉悦)
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k2(けにー)です。
♡と☆、感想をもらえると喜びます。
(感想は読みますが基本返信しません)
宜しくお願いします。
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