準惑星と嫉妬
第4話 どうして地球の一少女が
「わたし、準惑星って分類、納得してないんだよね」
「はあっ?」
わたしは思わず聞き返していた。
「何それ?」
わたしの部屋。
その寮の一室に、胸にピンタックの入った白シャツと紺色のプリーツスカートの、
それで、わたしがアップルティーを入れているあいだに言い出したことが、準惑星?
逆なら、まだ、あり得ると思う。
つまり、明珠女の生徒のわたしが、瑞城女子高校の寮に招かれて、そこに一人ぽつんと座っているときに、準惑星でも
お勉強をあんまりしない瑞城の生徒に、優等生の明珠女生が、いきなりまじめな部活の内容の話をし始める。そういうことはあるだろう。
わたしはそんなことはしないけど。
どうして、逆なんだ?
「うん」
と
「ありがとう」
と、古藤美里は、分厚めの、取っ手が猫の手の形になっているマグカップを受け取った。
猫の手形の取っ手、ちゃんと肉球もついてるよ。
肉球、柔らかくはないけど。焼き物だから。
で。
なぜ古藤美里がここにいるかというと、それは、昨日の
前の年度の後期の生徒会が、明珠女学館第一高校の生徒会もこれからは地域とのつながりを強める、と決めて、これまで出ていなかった地元泉ヶ原の花火大会に模擬店を出店することになった。
しかし、もともと自分の進学にしか興味のない生徒が多い明珠女で、花火大会の模擬店に出ようなんて生徒が集まるはずもない。
しかも、夏休み中で、学校に来ない子も多いのに。
それで、この問題が寮委員会に丸投げされた。寮委員長が帰省中だったので、その話が副委員長のわたしのところに来た。わたしが天文部だったためにその役割が天文部にさらに丸投げされた。
そこで、またいろいろあって、天文部で四人の出場者を模擬店の店番として確保したのだが。
その日になって、そのうち一人が来ない。
三人で模擬店は回すのは不安なので、前から知り合いの瑞城女子高校天文部の古藤美里に声をかけて手伝ってもらうことにした。
そのお礼ということで、この古藤美里を明珠女の生徒会長と文化祭実行委員長に引き会わせ、そのあと明珠女の寮のわたしの部屋に寄ってもらった。
「で」
つっけんどんに聞こえるのはわかって、きく。
「準惑星が何だって?」
「だから、
と古藤美里が言う。
「ああ」
でも、わたしたちは、冥王星が惑星として数えられていた時代をほとんど知らない。
美里は続ける。
「それが、おんなじような大きさの惑星的天体が見つかったからって、巻き添えにされて準惑星に格落ちなんて。せっかくさ、木星のジュピターから、土星がサターンで、
ネプチューンが海王星で、プルートーが冥王星だが。
「まあ、それは、しかたがないよ」
と、わたしもその猫の手マグカップからアップルティーを一口飲んで、答える。
これ、わたしにはいいけど、美里には熱くないのかな?
つまり、美里は猫舌ではないのか?
その答えはわからないまま、わたしは、知ってる知識をかき集めて、続ける。
「もともと海王星の運動に異常があるって思いこみがあって、海王星に重力で影響を与えられるくらいに大きい惑星、って探してたら見つかったのが冥王星で、だから海王星とおんなじくらいの大きさだと思われてたんだから。ところが、ほんとうは地球の月より小さい天体でさ。もともと人類の見込み違いだよ」
「じゃあ、見込み違いの責任を、人類は取るべきだよ」
いいんだけど。
どうして地球の一少女が冥王星のためにそんなに熱くなる?
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