13.実力
駅前なら、
「それは良いが、
「う、はい……」
忠告を最後に、クローヴィスとの通話を切る。ちょうどそのタイミングでバスが停留所に滑り込んできた。
「なんだ、テストの点が悪かったのか」
隣の席に陣取った杏輔がしかめっ面をする。
「そう……。キョウちゃんに教えてもらおうと思って、昨日忘れちゃったんだよね」
「そろそろ中間テストだぞ。本来ならこんなことに関わっている場合ではないんだがな」
「どうする? キョウちゃんは帰って勉強したい?」
「お前に心配される覚えはない」
と強がりつつも、遠い目で揺れる景色を眺めている彼だった。
バスの中で、絢世は勇哉に今度こそこれまでの経緯を話し終えていた。要約しようとすると頭がこんがらがるため、翠羽と出会ってからのこと全てを順番に羅列した形である。
座らず通路に立っていた勇哉は、それを聞き終わって、ふと思い立ったように口を開いた。外の眺めに没頭している翠羽を指す。
「こいつは、剣の達人とかじゃねぇんだよな?」
「え、さあ……」
印象としては、普段の翠羽からそんな雰囲気は微塵も感じられない。不可解そうな勇哉と、彼に倣った絢世の、二人分の視線に気づいて、話題の中心である彼はきょとんと首を傾げてみせる。
「……さっきはこいつもアレだし、俺は剣道のルールなんて無視でケンカのつもりだったんだけど」
物差しという単語は伏せる勇哉。思い出したくないのだろう。
「ここぞって場面で大振りになる。師範にも注意されてる俺のクセなんだが……、さっきのはどうもこいつ、それを見抜いてて、誘われた気がするんだよな。まさか一目でクセを見抜いた訳じゃねぇよなぁ」
「単なる負け惜しみだ。負け犬め」
「キョウちゃんってば! ごめんなさい。たぶんイライラしてるんです」
こちらを見もしないで放たれる杏輔の暴言。最近、彼の八つ当たりが増えたのは気のせいではないと思うのだが。
怒られるかとひやひやする絢世の心に反し、勇哉はそれを「そうかもな」とあっさり認めると、終点の瀬城駅より一つ前のバス停で、一行に降りるよう促した。
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