第11話 イリュージョン

「ほらほらのわちゃん、そんなに落ち込まなくてもいいんだパオ♪」


君が裏声を出しながら、象さんを手でぴこぴこ動かして見せてくる。しかも、それだけでも十分恥ずかしいのに、無駄に生き生きと動いててもうどうしたらいいのか…。僕は床に突っ伏したまま、半分泣きながらも君を睨む。どうしてこんな状況になっちゃったんだか、もう完全に理解が追いつかない!


「僕のイリュージョンを見て元気になるパオ♪今から僕のお鼻が大きくなるパオよ♪」


その瞬間、象さんの鼻に見立てたが、さっきまで柔らかくプラプラしてたのに、どんどん硬くなっていくのが見えて、さすがに目をそらすことができない。


「うわぁぁ、立派なお鼻…じゃないんだよっ!バカじゃないの!?なんで今ので硬くなるの!?鼻が反り立つって何!?聞いたことないし見たことないっ!」


叫び声をあげながらツッコまずにはいられない僕の目の前で、象さんの鼻は硬く反り立っていて、しかも鼻の上に口があっただけじゃなく、鼻の下にも口が描かれていることが判明して、僕の混乱はさらに加速する。


「だからなんで鼻の上下に口があんの!?これじゃ口二つじゃん!いったいどこで象を勉強してきたんだよ、図鑑読んだことある!?」


頭を抱えながら叫び、情緒がぐちゃぐちゃで、笑えばいいのか泣けばいいのかもうわからない。恥ずかしさと情けなさとなんとも言えない悔しさがごちゃ混ぜになって、僕の中で大爆発を起こしている。


「元気出たパオか、エッチなASMRと自撮りをSNSアップしていた承認欲求モンスターわのちゃん?」


君が僕の裏アカの名前を使って問いかけてきて、僕の感情が完全にブチ切れ寸前。


「ああぁぁぁあぁぁ!!だからそれ言うなってぇぇぇぇっ!!やめろ!僕の情緒が死んじゃうぅっ!わのちゃんって誰だよ!僕のことじゃないしぃぃっ!!」


涙を流しながら、手足をジタバタさせて床に叩きつける僕。完全に感情が崩壊して、怒りと恥ずかしさで暴れ回ってるけど、それを面白がる君の象さんは反り立ったままで、僕をさらに追い詰める。情緒が不安定どころかもうカオス。頭がぐるぐるして、どこにも逃げ場がなくて、ただひたすら叫ぶしかない僕の絶叫が部屋中に響き渡っている。

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